雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

顔料

「面を打つ」_面裏処理 5

   「面(おもて)を打つ」_小作り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


夏の気候から、
秋に変り、能面の彩色 にはいい時期になりました。

彫りの完成した能面が、お化粧を待っています。


表の化粧前に、 “ 面裏の処理 が必要です。

面裏には演者の汗などから能面を守る為に耐久性を考慮して、漆を塗ります。

しかし、
本漆は “ かぶれ などの弊害があるので、化学漆を使うのが通例になっています。



面裏の処理に必要な道具や材料は、

 面裏処理の道具
  ・工芸漆、
   
透(色なし)・黒
  ・うすめ液   
  ・まこも粉
 
  ・漆用の顔料
   
本朱・緑・黄  
 
  ・漆用刷毛(大・小)
  ・摺り用ペーパー



工芸用の と漆用の  顔料 がベースになります。



 1).作者銘に色漆を流す

色漆の調合_10.09

     透の漆に
     顔料を混ぜる




号の漆入れ_10.09









     凹彫りの銘に色漆を流し込む


号の漆入れ(2)_10.09









     面裏の基本色に応じて、銘の色を変える



 2).朱の下塗り

父尉(朱塗り)_10.09













 3).基本色の上塗り

父尉(上塗り)_10.09




     黒褐色の漆を
     上塗り


     (顎部はまだ未処理)







 4).ふるび粉をかける

父尉(まこも粉)_10.09

     半乾きの木地     
     に、まこも粉を
     振りかける







     自然な落ち着きのある色艶と仕上がり感を表現する ため


 5).研ぎ出し

父尉(研ぎ出し)_10.09










     8割方乾いた状態で、拭き漆で使用するペーパーで
     研ぎ出しをする
 
    
     研ぎ出すことにより、凹部にまこも粉の色が残り、
     凸部は下塗りの朱がわずかに浮き出てくる
    


これで、面裏の処理が終了して面裏は完了です。




女面の場合もほぼ同様の手順で、漆処理をします。

女面の朱塗り_10.09












女面の場合は、
紐穴の部分が毛書きされるので、紐で摺れた趣を出す為に、面表に黒褐色の漆を下塗りして置きます。

紐穴の疵彩色

  女面の
  紐穴部分の傷彩色


女面の朱塗りA090142





 紐穴部の
 面表の処理




基本色は、黒の漆で上塗りをして まこも粉 を振ります。

女面(黒塗り)_10.10







女面(まこも粉)_10.10











 

この後、研ぎ出して完成させます。

女面_10.11


雅勒 の場合、
男面は鉄色の面裏仕上げで統一しています。

男面(鉄色の調合)_10.10

   緑の顔料を
   透の漆で調合





男面(鉄色の調合2)_10.10




 黒漆を混ぜ
 鉄色に仕上げる





男面_10.11



能面の面裏は、
唯一作者の個性が出せる過程ですが、

さすがに、4面の同時処理は忙しいです。 


基本は一面ずつ仕上げるのがいいですネ。



次は、表の下塗りの段階に入ります。








< 過去の関連記事 >

   ・ 面裏の趣(おもむき)    ’10 7/26   ☞ こちら




古色液をつくる 3

能面の “ 古び ” を表現する彩色工程で使う「古色液(こしょくえき)」をつくりました。


保存していた「夜叉五倍子ヤシャブシ)」の実を軽く水で洗い、ビーカーに移して水を注ぐとやがて “ 琥珀色(こはくいろ) ” に輝きます。

ヤシャブシ       


琥珀の輝き




  琥珀色に輝く
  ヤシャブシの溶液 ⇒


ヤシャブシの実はタンニンを多く含み、古来より黒色の顔料お歯黒などに使われてきたそうです。



石綿網を敷いた伝熱器で5~6時間程、煮出します。

煮出し


この間に、防腐効果と色出しを兼ねて  《 タバコの葉 》  を入れて煮沸します。
この作業の為、2カ月程禁煙していたのにまた喫煙 を始めてしまいました。 罪作りな作業です (>_<) 



更に、数回水を差し加えて、ひたすら煮出します。

防腐剤

水差し
     








琥珀色から黒褐色の液になってきたら、ここで別の瓶に濾紙(ろし)を使って濾(こ)して中のヤシャブシと不純物を除きます。

濾し
        








一度濾した液を、新しい濾紙(ろし)でさらに濾しながら元のビーカーに戻して、
ふたたび、濃度を深めるために煮詰めます。

再度ビ―カへ

追煮出しP2270687








一時間ほど煮沸して黒味が出てきたら、埃(ほこり)の入らないように紙蓋をして、一昼夜寝かせます。


ビーカーの底にドロっとした沈殿物が溜まるので、
上澄み液だけを保管用の瓶に移して自然媒液の 「 古色液 」 が完成です。


沈殿


上澄み液








この 「 古色液 」 をスポイトで絵皿に吸い取って、硝煙(しょうえん)やケーキカラーなどで色合いを調整しながら(必要に応じ、水で薄めて) 対象となる能面の趣(おもむき)に合った “ 古色 ” のベースを作りだします。


出来上がり



古色 ” のベース色が決まったら、
“ 網ぼかし ” や “ タンポ打ち ”で能面に陰影を付けていくと、“ 古び ” の中に 『 幽玄味 』 のある面(おもて)が仕上がります。

また、目のシャドーや唇の紅の “ ぼかし ” などにも、この古色液を使います。



能面製作の過程での染色や漆(うるし)工法や金具の加工,メッキ,金箔貼りなどの諸作業も、学ぶことの楽しみかもしれませんネ  (^‐^)




     今回は、能面教室の生徒さん達にも参考になるように
     少し詳しく書いてみました。



           < 過去の関連記事 >                     
                    ・ ヤシャブシ、って ??    ’10 5/22


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