今年最初の観賞は、雅勒の年賀状にも使用した 雑能の【 蝉丸(せみまる) 】 を題材にします。
《 蝉丸 》 の宮(ツレ)は、醍醐天皇の第四皇子でありながら幼少時より盲目であったため、剃髪(ていはつ)の上、逢坂山に捨てられます。
《 蝉丸 》 は前世の報いとあきらめ、同情者の博雅三位(はくがのさんみ : 間狂言)が設えてくれた藁屋(わらや)で、心の慰みに琵琶を奏でて日々を送ります。
⇐ ツレの《 蝉丸 》
専用面
↑ 栗谷能の会のHPより
使わせて頂きました
一方、髪が逆立つ病のために狂乱し彷徨(さまよ)っていた姉宮の 《 逆髪(さかがみ) 》(シテ) は、琵琶の音を聞き、懐かしい音に足を止めます。
かけられた声に 《 蝉丸 》 と知った 《 逆髪 》。
⇐ シテの《逆髪》
専用面
姉弟は再会を喜びつつも、互いの身の上を嘆き合い、そして名残を惜しみながらも、再び 《 逆髪 》 は彷徨(ほうこう)の道を行き、 《 蝉丸 》 は見えぬ目でそれを見送ります。
花の都を立ち出でて、
憂き音に鳴くか賀茂川や
末白河をうち渡り ・ ・ ・
狂女なれど心は清瀧川と知るべし
小倉百人一首に登場する 《 蝉丸 》 は、 『 今昔物語 』では宇多法皇の皇子「敦実(あつざね)親王」に使える雑色(ぞうしき)となっていますが、能ではずいぶん身分が高くなっています。
これやこの
行くも帰るも わかれては
しるもしらぬも
逢坂のせき
蝉丸
能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室」
(http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html)
を覗いてみて下さい。
< シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
第4回 能楽「羽衣」と面 ’10 12/ 1
第3回 能楽「清経」と面 ’10 11/ 1
第2回 能楽「高砂」と面 ’10 9/30
第1回 能楽「翁」と面 ’10 8/18