能楽 “ 五番立 ” のうち四番目物は「神・男・女・鬼」のいずれにも属さない曲趣のものすべて ここに入れることから、「 雑能(ざつのう) 」 の名があります。

今年最初の観賞は、雅勒の年賀状にも使用した 雑能の【 蝉丸(せみまる) 】 を題材にします。



蝉丸 》 の宮(ツレ)は、醍醐天皇の第四皇子でありながら幼少時より盲目であったため、剃髪(ていはつ)の上、逢坂山に捨てられます。
蝉丸-a







蝉丸 》 は前世の報いとあきらめ、同情者の博雅三位はくがのさんみ 間狂言)が設えてくれた藁屋(わらや)で、心の慰みに琵琶を奏でて日々を送ります。


蝉丸
 ⇐ ツレの《 蝉丸
       専用面

栗谷能の会







                     
                    ↑ 栗谷能の会のHPより
                                    使わせて頂きました




一方、髪が逆立つ病のために狂乱し彷徨(さまよ)っていた姉宮の 《 逆髪(さかがみ) (シテ) は、琵琶の音を聞き、懐かしい音に足を止めます。

かけられた声に 《 蝉丸 》 と知った 《 逆髪 》。

逆髪
 ⇐ シテの《逆髪
       専用面

岩井氏のHP










姉弟は再会を喜びつつも、互いの身の上を嘆き合い、そして名残を惜しみながらも、再び 《 逆髪 》 は彷徨(ほうこう)の道を行き、 《 蝉丸 》 は見えぬ目でそれを見送ります。


     花の都を立ち出でて、
         憂き音に鳴くか賀茂川や
             末白河をうち渡り ・ ・ ・

       狂女なれど心は清瀧川と知るべし



小倉百人一首に登場する 《 蝉丸 》 は、 『 今昔物語 』では宇多法皇の皇子「敦実(あつざね)親王」に使える雑色(ぞうしき)となっていますが、能ではずいぶん身分が高くなっています。

 
百人一首
 これやこの 
  行くも帰るも わかれては
     しるもしらぬも 
           逢坂のせき
 
                       
蝉丸







 


能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
               第4回  能楽「羽衣」と面    ’10 12/ 1
               第3回
  能楽「清経」と面    ’10 11/ 1
               第2回  能楽「高砂」と面    ’10 9/30
               第1回  
能楽「翁」と面        ’10 8/18