能楽は、平安~鎌倉時代の舞楽や田楽を起源として、
室町時代に猿楽(さるがく:申楽)に曲舞(くせまい)という音楽を取り入れた 観阿弥(かんあみ)と、息子の 世阿弥(ぜあみ)により、更に芸術性の高い歌舞主体の芸に磨き上げられ、今に至っています。
能面の多くは室町時代末期に創成され、ほぼ完成していたようです。
能面師は、この時代に完成して型の決まった面を “ 本面(ほんめん) ” と呼び、その後は、その原型を継承していきます。
安土桃山~江戸時代には更に円熟し、一定の型が決まり各流派ごとに曲によって使われる能面が固定しました。
それ以降は、 “ 写しの能面 ” が作られ、新しい能面が創作されることはほとんどなかったようです。
“ 写しの能面 ” を より本面に近づける工夫がされ、考案されたものが 『 型紙 』 です。
面を打ち始めた当初は、師事する先生から 型紙 を頂いたり、写真集に付随されている 型紙 をもとに習作を作っていましたが、今では、序々に、型紙の無い能・狂言面創りにも挑戦して、
何とか、写真だけを便りに面を打つ事が出来るようになりましたネ
この狂言面の鳶(とび)もその一つです
⇐ ’07 第7回
「能面の祭典」に
出展したもの
( 佳作 )
参考にした写真集 ⇒
山本東次郎家
「狂言の面」
写真から、
基本となる平面と縦型の 『 型紙 』 だけは作ります。
基本の『 型紙 』 ⇒
眉・目・鼻・口は
デッサンします
後はひたすら、写真とにらめっこしながら打ち進めていきます
彩色も写真の色合いを見て再現します。
( 本面を見て色彩感覚が掴めればいいのですが ・ ・ ・ )
能面教室で、この狂言面を打って見たいと云う希望者がいたので真剣に型紙作りに取り組みました。
まずは、
ポイントとなる各部分の高さと横位置の関係を測定します。
⇐ 手作りの
三次元測定器
各部を測り、
平面図に記載する
横の基準
(赤線部)
・ 額(ひたい)
・ 眉の上
・ 目上
・ 目
・ 目下
・ 鼻の付け根
・ 口ばし
・ 顎(アゴ)
測定した高さと横位置から、グラフ用紙にプロットして概略型を描きます。
厚手の紙にトレースして
カッターで切り抜きます。
⇐ 切り取った後の
バリ取り
細かな部分は、
小さなハサミで ⇒
何度も、実物の面に合わせてながら型紙を調整していきます。
微調整は、
サンドペーパーで ⇒
こうして、額~顎(あご)までの横型紙を作っていきます。
とにかく、根気のいる作業ですぅ~ (>_<)
⇐ 各部の横型紙
・ 眉の上
・ 目
・ 口ばし
これで、すべての部分の型紙の出来上がりです。
能面教室の教材にするため、
出来あがった型紙をA3サイズに写しとり編集します。
教材にする平面図には、
ポイントとなる凹凸部の高さを明記するため
再度、測定して平面図に追記します。
⇐ 凹凸部の
微妙な部分を
再測定
これも、手作りの測定器で、
小学校で使うコンパスの針を
接触部に利用しています。 ⇒
⇐ 完成した
平面図
参考資料用の
側面イメージ図
⇒
最後に、狂言面の鳶(とび)の解説文と彩色手法の説明を付けて教材も完成です。
近代では、個々の能面師により独創性な創作面が創られるようになりました。
それも、後何百年もすると、その時代を代表する本面になるかも知れませんネ
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