そろそろ、
北の方からは紅葉の便りもちらほらと ・ ・ ・
ようやく、気候も秋らしくなり、
昨日あたりから肌寒ささえ感じる程になりましたネ~
旧暦の9月9日(今年は新暦の10月5日)は、
ちょうどこの季節に菊が咲くことから、
菊の節句(重陽の節句)と呼ばれ、
この日は前日に菊の花の上に置いた綿(着せ綿)に
染み込んだ露で体をぬぐったり、
花弁を浮かべた菊酒をいただいて長寿を願う
習慣があります。
この時期の能は、やはり
四番目物(雑能)の 《 菊慈童(きくじどう) 》 でしょう。
「 菊慈童 」 は、観世流の謡曲名ですが、
他四流(宝生,金春,金剛,喜多)の
《 枕慈童(まくらじどう) 》 とほぼ同じ内容の演目です。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ところは古代中国の魏(ぎ)の文帝の時代と
いいますから、三国志の時代です。
麗縣山(れっけんざん)の麓から、“ 薬の水 ” と云われる
不思議な水が湧き出す源をさぐるために、
魏の文帝の勅命を受けて臣下(ワキ)が、
深山に分け入り水源を訪れます。
勅使が辿りついた処は、
菊の花 の咲き乱れる仙境でした。
勅使の一行は、菊の花の咲き乱れた山中の庵に、
一人の美しい不思議な少年(シテ)を見つけます。
その美しい少年は、
周の穆王(ぼくおう)の時代に、
誤って帝(みかど)の “ 枕 ” の上を跨(また)いだために、
遠流(えんる)の刑に処され、
700年もの間老いることなく生き続けてきた
と云うのです。
しかし、少年に悪意のないことを知って憐れんだ王が、
その枕に法華経普門品(ふもんぼん)の妙文(みょうもん)を
書き添えて与えました。
⇐ シテの少年が、
掛ける【 慈童 】 の面
(観世流の演目)
少年の顔立ちの中
に大人びた表情を
のぞかせています
↑ 能面教室の
栗原冨美子さんの作品
そのありがたい経文を忘れないように 菊の葉 に
書き写すと、
その葉から伝わって流れる露が霊薬(れいやく)となり、
それを飲んでいた少年は700年後の今でも、
若いままで生き永らえていたのです。
秋の夜長、
少年自身も、自分の長命に驚き、
菊水を掬(すく)い菊花に戯れながら楽しく舞を舞った後、
残りの寿命を帝に捧げて、庵の中に姿を消します。
⇐ 《 枕慈童 》では、
【 童子 】 の面が
掛けられます。
透き通るような白い肌に
若い女面を想起させる
優雅な顔立ちの面です
↑ 栗谷能の会HP より
実はこの 「 菊の水 」、
“ お酒 ” なのだとも言われています。
《 枕慈童 》 は、時代背景が漢の時代となっていて、
時の隔たりは800年であったり、舞いの動機が
遠来の客人である勅使たちをもてなすために舞うなど、
若干の相違はあります。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
菊には、
昔から不老不死の効能があると信じられていて、
この故事に由来する “ 菊慈童 ” を描いた有名な
絵画も多いですね。
⇐ 横山大観の
「 菊慈童 」
菱田早春の
「 菊慈童 」 ⇒
新暦の現在では、
秋の菊の開花時期は10月後半ですので、
これから、あちこちで 菊花 の催しが始まります。
では、
雅勒の庵の 小菊 は? と云うと
この通り、
まだ蕾です
ご近所の庭先では、
こんなに見事に咲いているのにぃ~ (>_<)
スプレー菊(黄) ⇒
早咲きの小菊
きっと、
日当たりと肥料が
いいんでしょうネ
今や、日本は世界一の長寿国となっていますが、
生かされての長寿ではなく、
美味しいお酒が飲めて、美味しい料理が味わえて、
四季の花木を愛でられるような 気持ち と 体力 を
維持出来る長寿を期待したいものですネ
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