雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

能楽

能にみる癒し 5

雅勒の庵 の近くには、
茨城キリスト教大学があります。

その大学の図書館は、
地域住民にも解放されているので、図書館利用の手続きに行きました。

そこで、思いがけなく、
能楽をテーマにした論文に出会いました。

斎藤澄子先生の
能楽「羽衣」にみる日本的癒しの構造 と云う、論文が当大学の紀要に掲載されていたのです。




能の多くは、妄執もうしゅう : 成仏を妨げる虚妄の執念 を語りかける亡霊を主人公(シテ)にしています。

でも
羽衣(はごろも) はそういう妄執の世界とは無縁で、
なお且つ、能のあらゆる要素が完全にとけあった
能楽のスープ
とも云われるほど、“ 安らぎを与えてくれる   能の一つと云われています。


「能百十番」(平凡社)_羽衣
「能百十番」(平凡社) より





各地方に伝わる  羽衣伝説 では、
天から降りてきた天女が羽衣を隠されてしまい、泣く泣く人間の妻になる と云う人間の悲哀や葛藤が語られています。

しかし、能楽の 羽衣 は、
純粋さ、清らかさ、清々しさ、爽やかさ、華やかさなどへの人間の憧れを天女に仮託してそのままに表現されています。

そこが、
この舞台を見るものに安らぎと清々しい高揚感を与えてくれるのではないかと思います。




斎藤澄子先生の論じる 日本的癒しの構造 とは

 ・ 日本的情景と情緒
 
   近頃の銭湯の激減で、見る機会が無くなくなった、
   三保の松原からの富士山の絶景こそが “日本的情景
   の象徴とも云え、
   観客の心をつかむ最大の要因になっている。
 三保の松原










 ・ 天女の純粋無垢さに呼応する人間の良心
 
  
羽衣伝説では、人間のエゴイズムに巻き込まれる
   天女の姿の悲惨さに比べ、
   能の天女は、人に対してまったく不信感を抱かずに
   純粋無垢な姿を見せている。
 
   漁師の白竜(はくりょう)の、人間らしい欲や疑いを
   持ちながら、正されてその非を認めて直ちに
   善処出来る姿の潔(いさぎよ)さ。

  
 ・ 舞いの美しさ
 
   曲舞(くせまい)は、ゆったりとしたテンポの中に、
   ほのぼのとした春の風情を漂わせており、
   序ノ舞では、ゆっくりとした明るく静かな美しい
   天女の舞いを見せる。
   そして、急テンポな破ノ舞で舞台は終わる。

   この“羽衣”の舞いを観ることで、普通以上の
   達成感と充実感、さらには至福感や高揚感が
   得られる。
   
  


この三っの要素で構成されている 羽衣 なのだだそうです。


特に、
「いや疑いは人間にあり、天に偽りのなきものを」と云う、素晴らしい言葉に裏付けされるこの能のストーリーは、

人間関係に悩む人にとってのマイナス効果を払拭して、“ 癒し ” の効果をもたらすものだそうです。




今年も後わずかとなりましたが、
3月の大震災で、今でも色々な心を悩まされている人達が多くおられると思います。

来年4月の定例能面展には、
この 癒し ”  をテーマにした能面を出展してみようかと思います。






      
 能【 羽衣 】の物語は過去記事を覗いて下さい。
 

 < 過去の関連記事 >
 
  ・ 能楽「羽衣」と面(おもて)   ’10 12/1   ☞ こちら
 


女面の見極め 3

雅勒の場合、

能楽を観る際、どうしても掛けている

(おもて) に目が行ってしまいます。


能の演目やシテ(主役)を演じる

能楽師の流派などから、

ある程度の察しはつくのですが

女面 」 の場合、

なかなか見極めの付かない時もあります。

( まだまだ、能への執着が不足かも ・ ・ ・ ? )


又、能面展に来られる方で、

「 女面って、みんな同じに見えてしまう 」 と云う

方もいらっしゃいます。


ごもっとも   

素人の打った能面ですから、

面を見て名前が判る程の出来ばえではないので、

当然ですよネ~ (笑)



このような時には、

髪の “ 毛書き ” に注目すると判り易いですヨ 

女面の鬘(かずら)や髪の毛の書き方で

” の名前が判ります。


女面の場合、一般的には毛の 本数が増えるほど、

また乱れるほど年嵩(かさ) が増したことを現します。



小面(こおもて) 】 は、

若い女を主人公にする演目の多くに使われます。

現代の女性でいえば15,6歳でしょうか・・・

小面
   清楚で整然と添い並ぶ
   三本の毛書き が 【 小面
   の特徴 (一段毛書)


  


        各流派で幅広く
        使われます






万媚(まんび) 】, 【 若女(わかおんな) 】,

増女(ぞうおんな) 】, 【 孫次郎(まごじろう) 】 等は、

小面よりもう少し年嵩が増した女性です。


万媚
 
  万媚

   額中央から三本出て、
   途中で外側の一本が
   途中から他の二本の
   中に入り込む








 
若女
  【 若女

   額中央から二本出た、
   流れ髪の途中に二段
   のほつれ髪が特徴


         観世流の
           代表面




 
節木増
  【 増女

   額中央から二本出た、
   流れ髪が本体の髪に
   合体し、さらに途中から
   の三本の流れ髪が頬ま
   で流れ、
   それをまたぐほつれ髪が
   合わさる、三段毛書きが
   特徴



孫次郎
  【 孫次郎

   額中央から二本出た、
   流れ髪の途中から
   さらに二本流れ髪が
   追加される特殊な
   毛書きが特徴


         金剛流の
           代表面






さらに、年嵩が増し中年女性の 【 深井(ふかい) 】 や

曲見(しゃくみ) 】 は増女と同じ三段毛書きですが、

ほつれ毛の本数が多くなったり、

流れ髪がこめか辺りから流れ出るのが特徴となります。



深井曲見














       【 深井 】           【 曲見 】:
烏丸氏のHPより 



さらに年は嵩み、 《 高砂(たかさご) 》 のツレが掛ける

(うば) 】 は本数もずっと増え、

白髪交じりの毛書きになります。


姥















また別に、オクレ毛(長さの短い毛)を乱すことで、

すさまじさを出した 【 増髪(ますかみ) 】 や

泥眼(でいがん)
】 があります。


増髪泥眼













       【 増髪 】               【 泥眼




毛書き用の筆は、

軟らかくて腰のしっかりした面相(めんそう)筆や

蒔絵(まきえ)筆を使います。


毛書き用の筆

この作業が一番神経を使いますネ~ 




能楽や能面展示会などを観に行かれた際、

能面のことがチョットだけわかっていると

益々興味が出ると思いますが、

いかがでしたでしょうか   







   能・狂言面の詳細説明は
   HP 『 雅勒の庵
』 の 「 作品展示室 」 を覗いて見て下さい
                               ☞  こちら

能楽「東北」と梅 5

能楽は室町時代の初期に猿楽師の世阿弥(ぜあみ)

とその父の観阿弥(かんあみ)によって

大成され現代に受け継がれています。

世阿弥の著書 風姿花伝 では “ ” という

言葉を広範囲に、様々な意味で使っています。


風姿花伝









たとえば、観客に感動を与える力の “ ” 。

少年は美しい声と姿をもつが、

それは「時分の花」に過ぎなく、能の奥義である

まことの花」は心の工夫公案から生まれるもの

と説いています。

また、

「花
面白き珍しき、これ三つは同じ心なり」

とも言っています。

人が舞台を観て発見する「珍しさ」、この感動が

「花」であり「面白さ」でもある ・ ・ ・ と


時分の花」、「声の花」、「幽玄の花」。

これらの “ ” は人の目にも見えるものであり、

その芸より出てくる花であり、自然に咲く花のごとく、

やがてまた散り失せる時が来る。 

能面を打つ側にとっても奥深く、参考になる教えです。




このシリーズでは、

雅勒の庵に咲く “ ” をテーマに能楽について

語ってみましょう。


第一回目は、今や盛りの 梅の花 です。

白梅








紅梅
  







       




今年は寒さのせいか、

花持ちが良く、紅白が揃って競うように咲いています。




三番目物(鬘物)の【東北(とうぼく)】は、

梅の木陰で見る春の夢に、

和泉式部が歌を詠み舞を舞います。


月岡耕漁「東北」能画










                   
                   月岡耕漁の能絵

春の都を訪れた旅の僧が、

東北院(とうぼくいん)に咲き誇る
梅の花に心を留めます。

そこに一人の女(前シテ)が現れて、

「それは和泉式部の愛した軒端(のきば)の梅」と教え、

自分は梅の主(あるじ)と云って消えてしまいます。

小面

 ⇐ 梅の主が掛ける
       小面
  (前場と後場で
    使われます)


『お能の見方』










その夜、梅の木陰で読経する僧達の前に、

和泉式部の霊(後シテ)が姿を現して読経に感謝して

今は歌舞の菩薩となったと語り、和歌の徳を述べて

優雅な舞を舞います。


     春の夜の 闇はあやなし 梅の花
           色こそ見えね 香やはかくるる
         
                    
                           
躬恒

そして、僧の夢が覚めるのでした。


紅白梅
















近年では、お花見と云えば桜ですが

遠い昔は

 “ ” といえば梅をさすほうが多かったそうです。

梅と桜、少しずれて咲いてくれて良かったです (^‐^)v






  メインHP「雅勒の庵」の “ 四季の庭_冬 ” でも
             梅の花 ” が観られますヨ 
⇒ こちら
 

  能・狂言面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
         (
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                        を覗いてみて下さい。



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