能面教室の今年のテーマになった 【 獅子口(ししぐち) 】 の彩色に付いて解説します。
能楽 《 石橋(しゃくきょう) 》 に登場する 獅子 は文殊菩薩の
使いの獣(けもの)で、唐獅子 の精を表現していることから、
唐獅子をイメージして凹凸を強調した彩色で仕上げます。
⇐ 唐獅子の
イメージ
彩色は以下の手順の通りです。
1. 下塗り
数回の盛り上げ胡粉の下塗りの後に、数mmのボカシ刷毛か
彩色筆で凹凸のベースを作る
↓
(左)下塗りの状態 (右)凹凸のベース
2.上塗り(金泥の下地塗り)
金泥(きんでい)彩色の下地に、濃い赤茶系の色で上塗りする
3~4回の重ね塗りをする
〈 色の調合 〉
・ 朱土(しゅど)
・ 岱赭(たいしゃ)
・ 本朱(ほんしゅ)
上記を基本色ベースとして、ケーキカラーで調整する
目の粗いスポンジなどで叩き、
更に凹凸を際立出せる
3.金粉泥(きんふんでい)を塗る
金泥の本番塗りの前に安価な金粉泥を全体に塗る
⇐ 膠(にかわ)で
溶かす
↓
(左)金粉泥の下地 (右)金粉泥を塗ったもの
4.本金泥を塗る
ここで初めて(純)金泥の本番塗りをする
金色の発色が違ってきます ↓
(左)金粉泥の段階 (右)金泥を塗ったもの
金泥の溶かし方は、
正式には膠(にかわ)で溶かした後に皿を加熱して、
不純物を除いたものを使う方法もある。
5.古び彩色
濃い目のヤシャブシ液に松煙(しょうえん)を加え、
赤のカラーケーキ(又は、赤口彩墨)で若干赤味を付ける
硬めのボカシ刷毛で古びを付ける
この時、目や歯列などに古びが混ざらないように
アルミホイルなどでガードしておくと良い
6.研ぎ出し
400番のサンドペーパで下地の赤味が多少出るように、
研ぎ出しをする
7.仕上げの吹き付け
古びを付けた後に、再度(純)金泥をブラシで吹き付ける
金泥は膠(にかわ)で溶いているため
網ボカシをすると泡立って吹き付けられない
ざっと、このような方法で仕上げることにより
頭部の立体感と、面全体を覆う金色のアクセントを引き出すことが出来き、
獅子 の持つ野獣的要素の中に精霊としての役割を表現することが出来るのではないでしょうか。
次の定例の能面展が楽しみですネ~
この資料は、
能面教室での使用する為、多少専門的な解説になっています。
< 過去の関連記事 >
・ テーマを打つ ’12 4/24 ☞ こちら
・ 能楽「石橋」と牡丹 ’12 5/ 6 ☞ こちら