このシリーズも、いよいよ最終章の五番目物の切能(きりのう)まで来ました。

切能とは、能において天狗天神雷神龍神などがシテ(主役)となる演目で、五番立において一日の催しの締めくくりを飾り、エネルギッシュに演じられることから切能と呼ばれます。


今日は牛若丸でお馴染みの、【 鞍馬天狗 】の解説をしましょう。
昔の映画のヒーロ「鞍馬天狗」の源流でしょうかネ?

能絵_鞍馬天狗











春の京都、
鞍馬寺の僧が稚児(ちご)を連れ花見に出かけると、一人の山伏が現れ興(きょう)を妨げた為、ひとり稚児を残して僧達は去ってしまいます。

一人その場に残った沙那王しゃなおう:牛若丸)に、山伏は鞍馬山の大天狗であると名のり、兵法を授けるので平家を滅ぼすよう勧め、再会を約束して姿を消します。



後場(のちば:後半の場面の大天狗には、通常では赤頭(あかがしら)が使われます。

大べし見
天狗の総大将が
  掛けるにふさわしい
  《大べし見》 の面

  ( べし見とは唇を強く
    結び、眉をしかめた
    表情をいいます )


深見東州HP




        赤の大天狗 ⇒



        深見東州氏のHPよりお借りしました 



また、小書(異式演出)では白頭(しらがしら)で、杖をついて老(おい)たけた大天狗の様相となり、面(おもて)も 《 悪尉 》 系が使われます。

悪尉べし見a
 
 ⇐ 白頭で使われる
  《べし見悪尉》 の面 

  ( 悪尉とは強く恐ろしい
    雰囲気のある老人 )






粟谷能の会HP
 ⇐ 白頭の大天狗


粟谷能の会HP2 - コピー








         粟谷能の会のHPよりお借りしました  ↑






前場(まえば)と後場の合間には、間狂言(あいきょうげん)の木葉天狗こっぱてんぐ:アイ)の立喋りがあります。

「大天狗が牛若に兵法を教えるので、自分たちが太刀打ちの相手をすることになった」 と ・ ・ ・


鳶_狂言面
 ⇐ 木葉天狗が掛ける
   《
(とび)》の狂言面

間狂言_鳶










大天狗は、兵法の奥義を伝授された漢の張良(ちょうりょう)の故事を語り聞かせます。
そして兵法の秘伝を残りなく伝えると、牛若丸に別れを告げます。

将来の平家一門との戦いで必ず力になろうと約束し、大天狗は夕闇の鞍馬山を翔け、飛び去っていきます。



大天狗の勇壮な姿と豪快な動きが切能としての最大見せ場となっています。






能・狂言面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
   (
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                     を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
               第7回  狂言「節分」と面      ’11  2/ 1
               第6回  能楽「道成寺」と面    ’11  1/21
               第5回  能楽「蝉丸」と面     ’11  1/ 4
               第4回  能楽「羽衣」と面     ’10 12/ 1
               第3回
  能楽「清経」と面     ’10 11/ 1
               第2回  能楽「高砂」と面     ’10  9/30
               第1回  
能楽「翁」と面       ’10  8/18