これから製作する男面の 十六中将 を、彫りから彩色までの過程を随時紹介していきます。


雅勒 の持っている能面教室では、最初に習う面は
小面(こおもて) で、初心者の場合は月2回(3時間/回)
のペースで45時間で完成させるように指導しています。

勿論、
教室の時間外での作業がかなりのウエイトを占めますので、実際のトータル時間はもっと長くなるでしょうね。


製作工程は大きく分類すると
 木取り ⇒ 荒取り ⇒ 中彫り ⇒ 小作り&仕上げ
で彫りが完成します。

彩色は
 面裏処理 ⇒ 下塗り ⇒ 上塗り ⇒ 彩色 ⇒ 毛書き
で一面完成です。

尉系の【 小牛尉(こうしじょう) や鬼神系の【 獅子口(ししぐち)】,怨霊系の【 般若(はんにゃ)】 などは
さらに、髪・髭などの植毛や眼・歯列の金冠などの細工作業が加わりますのでもっと時間と技術が必要になります。




(おもて)の製作にあたり、
参考にするモデルをきめます。

同じ面でも、作者によっては表情や彩色はさまざまです。

池田家伝来「能面」
 池田家伝来
 『能面』(写真集)



P8090518




 大野出目家
 第6代 甫閑(ほかん)
          【十六







堀安衛門「能面打ち-上」
  堀安右衛門
  『能面打ち_上』 


十六中将_堀安右衛門







⇐ 伝 龍右衛門 写し
   堀安右衛門 作
     【十六中将





梅若六郎家「能の華」
 梅若六郎家
 『能の華』(図録)

十六中将_梅若「能の華」







 十六中将】本面





このように参考とする面の画像を見比べて、モデルとなる面を決定します。

最終的に、
堀安右衛門著の『能面打ち_上』に掲載されている型紙を参考にさせてもらい、
型紙








梅若六郎家 能の華 の【十六中将】本面をモデルにして打つことにしました。



それでは、
まず最初の工程の 木取り です。

 1).面裏となる檜の面材で、面裏となる方を鉋(かんな)
     を掛けます。
   
           能面材には柾目(まさめ)と板目(いため)がありますが、
      大体は柾目の材を使用します。

            面表                  面表
           ↓                 ↓
板目
柾目

            柾目                  板目


     一般に、木裏(樹心に近い方)を「面の表」としているが、
     古面にはその反対に、「木裏」を「面裏」としているもの
      もある。


 2).面材の縦方向の中心線を引き、
     平面と縦型の型紙で材の両面に製図します。

平面の製図












     【十六中将】の基本サイズ
      縦        ・・・・  6寸9分   (208mm) 
      横        ・・・・  4寸6分 (138mm)
      厚(鼻の頂点)  ・・・・  2寸2分 ( 67mm) 



     能面の大きさは「女面」を基準とし、
      【小面】が標準になっている。

      縦        ・・・・  7寸   (212mm)
      横        ・・・・  4寸5分  (136mm)
      厚(鼻の頂点) ・・・・  2寸3分 ( 70mm)

      「タテ7寸」は当時の日本人の平均身長(5尺5寸)から
      きているとも云われている。




 3).鋸(のこぎり)を使って、余分な部分を落とします。

木取り













 3).叩きノミや突きノミで、面裏と面表が垂直になる
     ように側面を均(なら)します。

側面の製図











     この過程が重要で、
      ここは、型紙通りに平面を決める。

      出来上がりの面の輪郭の美しさを求めて・・・




 4).次の工程で、縦型に合わせて打ちだす為
     側面の製図をします。

各部位の厚み









側面の製図_a













このような手順で、平面の 木取り の半分が完了します。


今回は、ここまで 
次はお盆明けになるでしょうかネ 




明日は、
片道200Kmの運転で墓掃除に行ってきます。 






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