雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

小面

双子の【小面】 4

双子の 小面(こおもて) の彫りが完成しました。


以前から頼まれていたものと、

先月の能面展で新たに頼まれたもの、

二面を一気に彫り上げました。


小面 追い彫り です。


小面、2面_5.23



どっちがお姉さんか って ??


小面、2面_5.22





 


              面裏の漆処理が完了した状態




左の 小面 が、お姉さんですネ。

10日程早く彫りあがったので ・ ・ ・ (笑)




さて今回は、

久々に 能と面の花物語 です。


鬘能(かずらのう 三番目物)に、

霊に憑かれた菜摘女 静御前(しずかごぜん) の亡霊が、

美しい装束を身に纏い、

寸分違わず相舞う曲があります。


静御前 の義経への恋慕の情を見せる美しくも

幻想的で不思議な曲の 二人静 のお話です。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


大和の国、吉野の菜摘川で、

神事に供える若菜を菜摘女(ツレ)が摘んでいると、

一人の里の女(前シテ)が現れ、

吉野に帰ったら神職に一日写経して

自分を供餐してくれるよう伝言して欲しいと云います。



小面
 菜摘女と静の霊が
 懸ける 小面
 






 双子の 小面
 のモデル面
 
  赤鶴の【 小面 】写し



菜摘女が名を間うと、里の女はそれには答えず、

 「 もし疑う人があれば、
   その時自分があなたに憑いて名を明かす 」 と

言い残して、消えうせます。



       ・ ・ ・ ・ ・ ・  中間  ・ ・ ・ ・ ・ ・


立ち帰った菜摘女は神職に話しますが、

神職が、ふと疑いの言葉を漏らしてしまいます。


するとたちまち菜摘女に霊が取り付き、

神職が霊に名を問うと 静御前 であると

ほのめかします。


静御前 の霊であると知った神職は、

舞を所望し、跡を弔うことを約束します。



取り憑かれた菜摘女が昔の舞衣装をつけて

舞いはじめると、

静の亡霊(後シテ)も同じ衣装で現れ、

影の様に舞ます。

futarisizuka[1]







    菜摘女と静の
    霊の相舞



                                   
                                    
                               Webサイトより借用


二人は義経の吉野落ちの様子を語り、

源頼朝の命で舞った「序之舞」を再び舞って見せ、

回向を頼んで霊は消えます。


  『 物ごとに憂き世のならひなればと、
     思ふばかりぞ山桜、雪に吹花の松風、
     静の跡を弔ひ給へ、静の跡を弔ひ給へ




                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



能の物語は、

正月七日の神事の為の菜摘時期ですが、

今、近くの山では 二人静 が咲いています。

二人静_5.23a







 千両(せんりょう)科の多年草

 2本の花穂の先に米粒の様な
 白花(雌しべを包む雄しべ)をつける。

 
  

二人静_5.23b











 


二本の花穂を 静御前  その亡霊の舞い姿に喩えて

名付けられた野草です。


ひっそりと咲くの花は

四枚の葉の上に、白い花穂が仲良くニっ寄り添うよう

に咲いています。



吉野の山奥で、

源頼朝に追われて奥羽に逃れる源義経と、

静御前
は涙の別れをしました。

そのあとに咲いたのがこの花であるとか ・ ・ ・ 




確か、

中森明菜の歌に 二人静 と云う曲が有りましたネ~

  「 殺(あや)めたいくらい 愛し過ぎたから ・ ・ ・
    添い寝して 永遠に抱いていてあげる ・ ・ ・

艶っぽい低音、

恐ろしくも悲しい女心は、演歌の心境です。





双子の 小面 は、近々嫁入りです。

面裏の漆(うるし)が完全に乾いたら、

嫁入り前のお化粧(彩色)を施します。


どんな、表情に仕上がりますかネ~








  < シリーズ : 能と面の花物語 >
    
     ・ 第9回 能楽「(えびら)」 と 梅  ’12  3/ 8   ☞ こちら
     ・ 第8回 
能楽「紅葉狩」 と 紅葉   ’11 11/11   ☞ こちら
     ・ 第7回 能楽「菊慈童」 と 菊花   ’11 10/20   ☞ こちら
     ・ 第6回 能楽「井筒」 と 尾花     ’11 9/ 2   ☞ こちら
     ・ 第5回 能楽「半蔀」 と 夕顔      ’11 8/ 4   ☞ こちら
     ・ 中間  狂言「千鳥」 と 千鳥草     ’11 6/23    ☞ こちら 
     ・ 第4回 能楽「杜若」 と 菖蒲?    ’11 6/17    ☞ こちら 
     ・ 第3回 能楽「石橋」 と 牡丹  
  ’11 5/ 6   ☞ こちら 
     ・ 第2回 能楽「桜川」 と 桜    
   ’11 4/ 1   ☞ こちら
     
・ 第1回 能楽「東北」 と 梅       ’11 3/11   ☞ こちら



「面(おもて)を打つ」_木取り 3

これから製作する男面の 十六中将 を、彫りから彩色までの過程を随時紹介していきます。


雅勒 の持っている能面教室では、最初に習う面は
小面(こおもて) で、初心者の場合は月2回(3時間/回)
のペースで45時間で完成させるように指導しています。

勿論、
教室の時間外での作業がかなりのウエイトを占めますので、実際のトータル時間はもっと長くなるでしょうね。


製作工程は大きく分類すると
 木取り ⇒ 荒取り ⇒ 中彫り ⇒ 小作り&仕上げ
で彫りが完成します。

彩色は
 面裏処理 ⇒ 下塗り ⇒ 上塗り ⇒ 彩色 ⇒ 毛書き
で一面完成です。

尉系の【 小牛尉(こうしじょう) や鬼神系の【 獅子口(ししぐち)】,怨霊系の【 般若(はんにゃ)】 などは
さらに、髪・髭などの植毛や眼・歯列の金冠などの細工作業が加わりますのでもっと時間と技術が必要になります。




(おもて)の製作にあたり、
参考にするモデルをきめます。

同じ面でも、作者によっては表情や彩色はさまざまです。

池田家伝来「能面」
 池田家伝来
 『能面』(写真集)



P8090518




 大野出目家
 第6代 甫閑(ほかん)
          【十六







堀安衛門「能面打ち-上」
  堀安右衛門
  『能面打ち_上』 


十六中将_堀安右衛門







⇐ 伝 龍右衛門 写し
   堀安右衛門 作
     【十六中将





梅若六郎家「能の華」
 梅若六郎家
 『能の華』(図録)

十六中将_梅若「能の華」







 十六中将】本面





このように参考とする面の画像を見比べて、モデルとなる面を決定します。

最終的に、
堀安右衛門著の『能面打ち_上』に掲載されている型紙を参考にさせてもらい、
型紙








梅若六郎家 能の華 の【十六中将】本面をモデルにして打つことにしました。



それでは、
まず最初の工程の 木取り です。

 1).面裏となる檜の面材で、面裏となる方を鉋(かんな)
     を掛けます。
   
           能面材には柾目(まさめ)と板目(いため)がありますが、
      大体は柾目の材を使用します。

            面表                  面表
           ↓                 ↓
板目
柾目

            柾目                  板目


     一般に、木裏(樹心に近い方)を「面の表」としているが、
     古面にはその反対に、「木裏」を「面裏」としているもの
      もある。


 2).面材の縦方向の中心線を引き、
     平面と縦型の型紙で材の両面に製図します。

平面の製図












     【十六中将】の基本サイズ
      縦        ・・・・  6寸9分   (208mm) 
      横        ・・・・  4寸6分 (138mm)
      厚(鼻の頂点)  ・・・・  2寸2分 ( 67mm) 



     能面の大きさは「女面」を基準とし、
      【小面】が標準になっている。

      縦        ・・・・  7寸   (212mm)
      横        ・・・・  4寸5分  (136mm)
      厚(鼻の頂点) ・・・・  2寸3分 ( 70mm)

      「タテ7寸」は当時の日本人の平均身長(5尺5寸)から
      きているとも云われている。




 3).鋸(のこぎり)を使って、余分な部分を落とします。

木取り













 3).叩きノミや突きノミで、面裏と面表が垂直になる
     ように側面を均(なら)します。

側面の製図











     この過程が重要で、
      ここは、型紙通りに平面を決める。

      出来上がりの面の輪郭の美しさを求めて・・・




 4).次の工程で、縦型に合わせて打ちだす為
     側面の製図をします。

各部位の厚み









側面の製図_a













このような手順で、平面の 木取り の半分が完了します。


今回は、ここまで 
次はお盆明けになるでしょうかネ 




明日は、
片道200Kmの運転で墓掃除に行ってきます。 






 < 過去の関連記事 >
 
   ・ 「秘すれば花」 と云うけれど    ’12  8/7  ☞ こちら

花の小面 5

能面で女面と云えば、最も若い 【 小面(こおもて) 】 でしょう。 

” は愛らしさ、美しさの接頭語だと思います。
歳の頃は、16、7歳ですネ~ 



金春(こんぱる)小面、宝生(ほうしょう)増女(節木増)、金剛(こんごう)孫次郎、観世の若女が各流派を代表する “ 若い女面 ” ですが、
金剛流に伝わった有名な 小面 があります。


室町の初期、能に心酔した豊臣秀吉が、石川龍右衛門(りゅうえもん)の打った 小面 を三面、手に入れそれぞれに雪・月・花の名前を付けて愛蔵したそうです。

晩年「雪の小面」は師匠格にあたる金春太夫に、「月の小面」は後事を託した徳川家康に、そして
花の小面 】 を当時の名人であった金剛太夫に与えたといいます。

小面_龍右衛門
      三井記念美術館所蔵 旧金剛宗家伝来 「 能 面 」 より






同じ 【 小面 】 でも作者によって、 愛らしさ、美しさの表現は微妙に変ります。


雅勒が以前に打った 小面
近江おうみ)の能面師で般若等の鬼面を得意とした赤鶴(しゃくづる)一刀斎の本面を参考にしたものです。

小面_赤鶴  写し


 ⇐ ’07 の作品




小面_赤鶴





         赤鶴の
         【 小面 】 本面
 ⇒

  丹波篠山で、
  本面にお目にかかりました。




どうですか 
花の小面 】 と 赤鶴の【 小面 】、違いが分かりますよネ。




次の製作目標は、【 花の小面 】 です。 

赤鶴の 小面 よりも、少し下膨れの幼い表情が現わせますかネ~ ???



あいにく、正面の写真しかありませんので
能面打ちのバイブルともいえる鈴木慶雲氏の書籍に掲載されている二種類の型を参考に型紙を作りました。

img138
 ⇐ バイブル
   (初版と再版)






 
                勿論、写真は白黒で寸法は、寸厘です。 

img163















雅勒流の平面図と縦型の基本型紙を作り、横からみたイメージ図を製図します。

P9101123
















 P9101122



    側面の
    イメージ図
 ⇒



これで、【 花の小面 】 の面打ち準備が完了 




面打ちの格言で、
小面に始まり、小面に終わる」 と云われますが、
これはまだまだ路半ばの習作だと思います。

ある意味、終わりの無い精進です。 






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