また、暑さが戻ってきました。 


緑のカーテン ” が、効力を発揮しています。


緑のカーテン ”と云えば、

昔は 朝顔 や ヘチマ や 瓢箪(ひょうたん)でしたが、

今では食のブームも相まって、“ ゴーヤ(にがうり)

が人気ですネ~ 



ところで、「半蔀(はしとみ)」ってご存知ですか 

上半分を外側へ吊り上げるようにし、

下半分をはめ込みとしたものを蔀戸(しとみど)と云います。

そこに、

朝顔 や ヘチマ や 瓢箪の弦を這わせて、

涼を取っていたようです。

いまでは、あまりみられない光景ですが、

元祖 “ 緑のカーテン ” です。


半蔀のイメージ
   平安時代から始まった
   建築用法の 半蔀

   こんなイメージです ⇒ 






今回は、

源氏物語でお馴染みの 「 夕顔 」 に纏(まつ)わる

能楽
半蔀 》 の花物語です。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

京都は、北山・紫野(むらさきの)の雲林院(うんりんいん)

そこに住む僧が、

夏安居(げあんご)の法要(夏の九十日間籠もる座禅行)

終わりに、毎日供えてきた花のために立花供養を

行っていました。

すると夕暮れ時に女がひとり現れ、

一本の白い花を供えました。

僧が、「ひときわ美しく可憐なその花の名は何か」

と尋ねると、

女は “ 夕顔 ” の花であると告げます。

更に「私は五条あたりに住んでいる者で、

この立花の陰から来ました」 と言い残して、

再び立花の中に消えてしまいます。


節木増 ⇐ 宝生流で、
  夕顔の霊が掛ける
  節木増 】 の面

  鼻の付け根辺りに
  節があり、
  節からのヤニ後が
  景色となっている。


孫次郎



  金剛流では、
  孫次郎 】の
  面が掛けられる   ⇒





     ( 他の流派では、【 小面 】、【 若女 】 などが掛けられる )




里の者から

光源氏 夕顔の君 の恋物語を聞いた僧は、

さきほどの言葉を頼りに五条あたりを訪ねます。

そこには、昔のままの佇まいで半蔀に夕顔が咲く

寂しげな家があり、

僧が菩提を弔おうとすると、

半蔀戸(はしとみど)を上げて 夕顔の霊 が現れます。


img157













 
                 「 能百十番 」(平凡社) より



夕顔の霊は、

かつて、香を焚(た)き染(し)めた扇子に乗せた

夕顔の花 ” を贈った 光源氏 との恋の思い出を語り、

(序之舞)を舞うのでした。

img156














                             「 面からたどる能楽百一番 」 より


そして僧に重ねて弔(とむら)いを頼み、

夜が明けきらないうちにと 半蔀 の中へ戻って

いきます。



そのすべては、僧の夢のうちの出来事でした。


                          (  観世流は 「 はじとみ 」 と読みます )
 
                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



雅勒の庵には、 “ 夕顔 ” は有りませんが、

朝と昼の2つの “ ”が咲いています。

朝顔
 ⇐ 朝の顔
  朝顔 】 です。










朝顔a
 庭が狭い時は
 盆養作り
 いいですネ  ⇒











意識して、植えたのではないのですが、

いつからか咲くようになりました。

昼顔
 ⇐ 昼の顔
  昼顔 】 です。













ちなみに、夕暮れ時から咲きだし、

翌朝には萎んでしまう 【 夕顔 】 とはこんな花です。

夕顔

 ⇐ 白ウリの花を
  夕顔 】 と云うよう
  です。


  干瓢(かんぴょう)に
  する丸ユウガオとは
  違う種類のようです。


 ( Webサイトより借用 )


源氏物語の 「 夕顔 」 は

こんなイメージだったんでしょうネ 






朝・昼・夕 ときたら、

やっぱり “ 夜の顔 ” もあるのかな 


と思ったら、有りましたヨ~


夜顔

 観賞用の
 【  ヨルガオ
 ⇒








                                             ( Webサイトより借用 )


ヨルガオのことを「ユウガオ」という人も多いよう

ですが、ウリ科の「ユウガオ」と異なり、ヒルガオ科

で観賞用だそうです。




来年は、

朝・昼・夜 と、三つの顔の花を揃えてみたいですネ~ 







   < シリーズ : 能と面の花物語 >
        
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’11 5/ 6   ☞ こちら 
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・ 第1回 能楽「東北」 と 梅     ’11 3/11   ☞ こちら