秋ですネ~

でも、残暑やら台風接近で落ち着かない日が

続くようです。 


こんな夜は、

物悲しい秋の夕暮れに揺れる “ 尾花〔ススキ〕 ” を

見ながら気持ちを癒してみてはどうですか 


能の演目で、もっとも幽玄味のある鬘物(三番目物)、

その中でも 《 井筒(いづつ) 》 は最高の演目とも

云われています。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ある秋の大和の国の在原(ありわら)寺。

廃墟となったこの寺に、諸国を旅する僧が

初瀬参りの途中に立ち寄ります。

かって、ここに住んでいた在原業平(ありわらのなりひら)

妻の瞑福を祈っていると、

僧の前に仏に手向ける花水を持った里の女(前シテ)

が現れます。

 
若女
シテの里の女が、
  掛ける【 若女 】 の面


  流派により
  【 小面 】や【 増女
  の面の使用されます


「能楽十番」(平凡社)_井筒




       井筒の陰から
       現れた里の女  ⇒


 
 
                              「能百十番」(平凡社)より ↑ 




僧に問われるままに、業平と紀有常(きのありつね)

娘の恋物語を語ります。


幼い頃に井戸で背比べをした二人は、

成人して歌を詠み交わして結ばれた、と云う。


   つつゐ
つの 井筒にかけし まろがたけ 
           過ぎにけらしな 妹見ざるまに

   〈返し〉 

   くらべこし ふりわけ髪も 肩過ぎぬ 
           君ならずして たれかあぐべき



女はみずからを、紀有常の娘であると明かして

井筒の陰に姿を隠します。



秋の月の冴える夜、僧が仮寝をしていると

業平の形見の冠(かんむり)に直衣(のうし)を身に

付けた紀有常の娘の霊(後シテ)が現れます。

女の霊は業平を恋い慕いう序之舞を舞い、

さらには、井戸を覗き込み水鏡に恋人の面影を

見るのでした。


井筒_能面の世界(平凡社)



  冠に直衣を身に付けた
  紀有常の娘の霊  







                       


                                      「能面の世界」(平凡社)より ↑ 



やがて夜明けを告げる鐘がなり僧の夢が覚めると、

あとには松ヶ枝や芭蕉葉を渡る風の音が響く

だけでした。


                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


この 《 井筒
》 の舞台では、

ススキをつけた井戸の作り物が出され、

淋しい秋の夜の古寺を表現しています。
 文化デジタルライブラリー











雅勒の庵 の片隅にも、“ 尾花 ” がありますヨ~

(ふ)入りのススキで、

昔は矢羽根模様がはっきりしてましたが、

この株も老化してきているのか? 

麩模様がボケてきてますネ~
 (>_<)

ススキの穂

麩入りススキ


















麩模様













(おもて)の話に戻ります。

喜多流の粟谷明生氏のHPで、こんな記事が

掲載されていました。

   《 井筒 のシテの面は喜多流では通常「小面」ですが、
   今回は【 宝増(たからぞう) を選択しました。
   かわいらしい女だけでは井筒の女を表現できないからです。
 
    ・・・・
 
   つまり 井筒 という作品に漂う「待つ女」の錯綜(さくそう)
   した内面は若い姿では表せない ・・・





この内容に、心動かされ今年初頭から【 宝増 】の

面打ちを始めたのですが

震災とか猛暑で気持ちが萎縮してしまい、

手つかずのままにしておいたものをようやく

を完成させました。


宝増


 彫の完成した
   【 宝増











 
宝増_裏


  面裏に雅号を
  入れて完成です。
 





中秋の名月までには、

彩色を施して完成させたいものですネ~

でも、「待つ女」の表現が出来るかナ~ ??











   < シリーズ : 能と面の花物語 >
        
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      ・ 中間  狂言「千鳥」 と 千鳥草  ’11 6/23    ☞ こちら 

      ・ 第4回 
能楽「杜若」 と 菖蒲?  ’11 6/17   ☞ こちら 
      ・ 第3回 能楽「石橋」 と 牡丹  
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・ 第1回 能楽「東北」 と 梅     ’11 3/11    ☞ こちら