雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

面から観る能楽

能楽「清経」と面(おもて)3

 能の二番目物は「修羅物(しゅらもの)」,「修羅能(しゅらのう)」とも呼ばれます。

修羅能とは、戦(いくさ)の罪により修羅道に堕ちた武将などが主人公となる演目
のことで、負け戦の主人公登場するものを負修羅(まけしゅら)と云い、 勝ち戦の主人公が登場するものを勝修羅(かちしゅら)と呼ばれます。

  武将は殺生(せっしょう)を繰り返した罪で、死後は戦いに
  あけくれる“修羅道”へ堕ち、苦しみ続けると考えられて
  いました。



今回は、源平の戦乱に引き裂かれた夫婦の悲劇の演目、【清経(きよつね)】に付いて語りましょう。


時は秋、
                      
小面(こおもて)
』の面を掛けた、平清経の妻(ツレ;主人公や脇役に連れられて登場する人物が登場して、脇座に着くと、
清経の家臣である淡津の三郎が、豊前(ぶぜん)の国(九州)柳が浦の沖で自害した平清経の形見の遺髪を届ける為に都へと戻ってきます。

小面
⇐ ツレの平清経の妻が
    掛ける小面





清経_能絵



          淡津三郎との
           面会の場面


清経の妻は淡津三郎から夫の訃報を聞き、討死や病死ならともかく再会の約束を破って自ら身を投げたことを怨めしく思い、悲しみにくれ、受け取った形見の黒髪を手向け返し、涙しながら床に臥します。


その夜の妻の夢に清経の霊(シテ;主人公が在りし日の姿で現れ、
願をかけた宇佐八幡に見放されたこと、敵に追われ舟に飛び乗ったが望みを失い、ついに決意して入水した最期の有様を語ります。

中将
⇐ シテの平清経が
    
掛ける中将の面





清経_awaya-noh



      戦いの有様を舞う
            清経の霊 ⇒





                    ↑ 栗谷能の会のHPより
                              使わせて頂きました


そして、
修羅道の戦いの有様を見せた後、最期の時に十念を唱えた功徳により成仏できたことを伝えて、消えて行きます。



通常の【屋島】、【敦盛】などの修羅物は
「シテが化身で旅僧の前に現れ、後場で正体を現して修羅道の苦しみを救ってもらう」と云う構成ですが、【清経】の演目では「自分で唱えた念仏の功力で成仏する」ことと、前場と後場の境が無く一場で構成されているところが特異な点です。

前場と後場の境の緊張感はないものの、場面が秋という季節に合ったしっとりとした雰囲気が持続されているように思います。



今年は、「勝修羅」の【屋島】をテーマにして、『赤平太』と『三光尉』を打っていますが、なかなかはかどりません。 (>_<)
   
いずれ、“雅勒の展示室”に掲載しますので ・ ・ ・



能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >                     
               第2回  能楽「高砂」と面   ’10 9/30
               第1回  
能楽「翁」と面     ’10 8/18


能楽「高砂」と面(おもて) 5

江戸時代、能は一日の興業で狂言をはさんで五番(能は一番、二番と数える)行われるのが本式だったそうで、神・男・女・狂・鬼と、内容によって演能の順が決まってました。

これを“五番立”といい、演能順を決めるものでもあり
、能の作品を大まかに分ける分類法でもあるわけです。


その一番目物として、神を主人公にした“神能”が演じられ「脇能(わきのう)とも呼ばれます。
(前回解説の『翁』は一番目物の前に演じられる儀式です。)

その中で、結婚式でよく謡われる『高砂(たかさご)は一般の人にも馴染みがある演目でしょう。



平安時代前期の延喜(えんぎ)の頃。
九州から都にのぼってきた阿蘇神社の神主・友成一行は、高砂の浜辺に立ち寄り、松の落葉を掃く老夫婦に出会います。

老夫婦は国を隔てている高砂の松住吉(すみのえ)の松が何故、“相生(あいおい)の松(夫婦の松)と云われているのかを語ります。

「実は自分たちも住吉(すみのえ)と高砂に離れて暮らす夫婦だが、心が通っていれば遠く離れて暮らしても夫婦であることに変わりないと話し、松もまた同じだ」と  ・ ・ ・

koushijyo
⇐ 前シテの老人の掛ける
   小牛尉(こうしじょう)の面

uba




     
       前ツレの老女の掛ける
      (うば)の面
 ⇒



   前場の落葉を掃く老夫婦
           19980626_2
                ↑ 
深見東州氏のHPより
                      使わせて頂きました


さらに詳しく聞きたいと言う友成に、我ら夫婦はそれらの松の精なのだと正体を明かし、住吉(すみのえ)で待とうと告げて小舟に乗って姿を消します。



友成らが月夜に船を出し、住吉(すみのえ)の浜辺にやってくると、西の波間から住吉(すみのえ)明神(みょうじん)が現れます。
明神は長寿をほこる松のめでたさを称え、平和な世を祝福する舞を舞います。

kantan
 ⇐ 後シテの住吉明神の掛ける
    
邯鄲男(かんたんおとこ)
    の面







   後場の住吉(すみのえ)明神の舞
           19980626_1
                ↑ 深見東州氏のHPより
                      使わせて頂きました



『高砂や、この浦舟に帆を上げて、
            この浦舟に帆を上げて、
 月もろともに出で潮の、波の淡路の島影や、
                 遠く鳴尾の沖過ぎて、
はや住吉(すみのえ)に着きにけり、
              はや住吉に着きにけり』
 
は結婚披露宴
の定番の一つで、唄には、夫婦和合のハウツーの意味があるようです。





能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。

       < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
                         第1回  能楽「翁」と面  ’10 8/18

能楽「翁」と面(おもて) 5

能・狂言の魅力を、能面・狂言面から探ってみるのも興味深いものです。
雅勒の作品をベースに能・狂言の演目と内容をシリーズで解説してみます。

初回は、やはり『(おきな)』でしょう。

』の演目は「能にして能にあらず」といわれ、他の能と異なり劇的な展開を見せることのない儀式の演目です。

揚幕が上がると、「面箱」を掲げた狂言方が出てきます。「面箱」の中には「翁の白式尉」「三番叟の黒式尉」「三番叟の鈴」が収められています。
演者より先に「面(おもて)が登場します。面はご神体であるわけです。
面箱の次にはシテ(主役)の翁が直面(ひためん:面をつけずに素顔のまま)で出てきます。次に、ツレ(助演者)の千歳(せんざい)狂言の三番叟(さんばそう)の順に役が出てきます。


司祭役の太夫(シテ)が舞台右奥に座した後、
笛の吹き出しと小鼓(つづみ)の連打にのって、「とうとうたらりたらりら・・・(呪文めいた文句)と謡い出す。
続いて、千歳が若さを代表して溌剌(はつらつ)たる露払の舞を舞ってその場を清めます。
その間にシテが白式尉(はくしきじょう)の面をかけ、清められた場で白き翁の神が天下泰平を誓う舞を舞ます。

  白式尉                  
hakusiki   」の舞
        


「能面の風姿」(東方出版)
                          「能面の風姿」(東方出版) より ↑

続いて、三番叟が直面(ひためん)で「おおさいおおさい喜びありや・・」と、躍動的な「揉(モミ)ノ段」を舞います。
その後、黒式尉(こくしきじょう)の面を掛け、黒き翁の神となって鈴を振りかざし「鈴ノ段」を舞い、“五穀豊穣”を祈りを捧げます。

kokusiki-yoko
 ⇐ 黒式尉
 
    農耕になじんだ庶民的な
    神の相貌







「白式尉」、「黒式尉」の共通の特徴は、“切り顎(あご)”と“への字眼”で、「白式尉」の眉は兎の毛や麻で作った“ボウボウ眉”も他の能面には見られない工作です。


また、』の特殊演出古い演出)「父尉(ちちのじよう)延命冠者(えんめいかじゃ)には父尉延命冠者の能面が使われます。

enmeikajya

 ⇐ 
延命冠者
 
   延命の徳をそなえた
   少年の相貌で、「父尉」
   と対になる役









近年、『』の演目は新年あるいは舞台のこけら落としに上演されることが多くなったようです。


現在「老い」はマイナス要素で考えられることが多いのですが、古来伝統的には、長寿を保った老人(=)には不思議な霊力が籠もっていると、考えられ「年老いる」ことはプラス評価でもあったわけです。

現代社会にも、そうあって欲しいものですネ! (^‐^)v



能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。

記事検索
月別アーカイブ
プロフィール

雅勒

メインHP ⇒ 雅勒の庵 』 

- - - - ’24 ( R.6 )- - - -
8/18青柳氏の【邯鄲男】をアップ
8/12 柏原氏の【 蝉丸 】【逆髪】をアップ
6/26「作品展示室」に【神鳴】をアップ
4/28「催し物情報」に能面展情報をアップ
2/7「作品展示室」に【生成】をアップ
2/6「催し物情報」に能面展情報をアップ
2/3 松本氏の【 蝉丸 】・
柏原氏の【姫鬼】・
青柳氏の【逆髪】を アップ
1/25 松本氏の《 蛇 》 をアップ


- - - - ’23 ( R.5 )- - - -
12/10 柏原氏の《 深井 》 をアップ
7/14 会員「作品教室」に受賞履歴アップ
2/3 催し物情報に能面展告知 をアップ





お時間があれば、こちらもどうぞ


吉野天人(よしのてんじん)


― 能「吉野天人」(能絵)-

能「紅葉狩」 ☞ こちら     



― 秋草 -
イラスト「十五夜」 より☞ こちら    
アクセスカウンター
  • 昨日:
  • 累計:

       ( UUを表示 )

訪問有難う御座います ♪♪

雅勒の勝手な、お気に入り
能面師 中村光江 さん
 「能面の世界」

能面アーチスト 柏木裕美 さん
 「能面の世界」

和あらかると 岩田晶子 先生
 組紐教室

ノビタ さん 
 「ノビタの釣り天国」

シャンソン歌手:日野美子 さん
 ♪日野美子の日記♪

シャンソン歌手:別府葉子 さん
 葉子通信

小森真理子 さんの公式HP
 琴 ー 感動

ポピュラーピアニスト namiさんの
 咲花/nami ブログ

ROUGE(ルージュ) さんの
 額 ~薔薇の国星~

音霧 忍 さん
 季(とき)の庭

房総のままちゃん
 ご飯の後。

暇人haru さん
 趣味の歳時記

パラグライダー人生 稲垣 さん 
 「パラグライダー人生」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
QRコード
  • ライブドアブログ