般若面 と 般若心経の記事を載せましたが、
般若 がお面と認識されるようになったのは、
般若心経の御経が少し関連しています。
般若心経は、本来の意味から言えば、
「 智慧のお経 」 ということになりますが、
般若心経で怨霊を退治したことから、
鬼と言えば 般若 となったという説があります。
源氏物語の中で、
嫉妬や恨みのために生霊となった六条御息所が、
祈祷によって退散する場面が描かれますが、
この時の祈祷が般若心経だったと言われています。
今回は、
能 《 葵上(あおいのうえ) 》 の物語を ・ ・ ・
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光源氏の正妻、左大臣家の息女の葵上は、
物の怪に悩まされていました。
物の怪の正体を知るべく院の臣下(ワキツレ)が
梓弓(あずさゆみ)の音で霊を呼ぶ「梓の法」の
梓弓
名手の照日(てるひ)の巫女(ツレ)を招き、
物の怪の正体を明らかにすることになりました。
すると、
源氏の愛人であった六条御息所の生霊が
破れ車に乗って現れ、
六条御息所の生霊(前シテ)
前シテの
六条御息所が
懸ける【 泥眼 】
眼に金泥が施されている
愛を失った悲しみと恨みを葵上の枕元で
責めさいなみ、幽界へ連れ去ろうとしました。
・ ・ ・ ・ ・ 後 場 ・ ・ ・ ・ ・
臣下は急いで、
比叡山の横川に住む修験道の小聖(ワキ)を
招き、怨霊退治の祈祷を始めます。
するとそこへ、
光源氏の愛人であった六条御息所の怨霊が
鬼女の姿となって現れます。
鬼女の懸ける
【 白般若 】
般若面のなかで、
最も品位の高い面
恨みの塊となった六条ノ御息所は、
葵上のみならず祈祷をしている小聖にも
襲いかかります。
六条御息所の怨霊は
ついに法力に祈り伏せられ、
ふと我に返って気付いた浅ましい我が姿を恥じ、
最後は心を和らげ成仏するのでした。
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物語の中心は、
鬼にならざるを得なかった六条御息所の
恋慕と嫉妬の情です。
余談ですが、
御息所が葵上への嫉妬に悩む直接の原因と
なったのは、
賀茂の祭の車争(くるまあらそ)いに破れたことで、
前場では、
御息所は前半破れ車に乗って登場する想定と
なっています。