雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

面から観る能楽

能楽《葵上》と面(おもて) 5

先のブログで、

般若面 と 般若心経の記事を載せましたが、

般若 がお面と認識されるようになったのは、

般若心経の御経が少し関連しています。


般若心経は、本来の意味から言えば、

「 智慧のお経 」 ということになりますが、

般若心経で怨霊を退治したことから、

鬼と言えば 般若 となったという説があります。


源氏物語の中で、

嫉妬や恨みのために生霊となった六条御息所が、

祈祷によって退散する場面が描かれますが、

この時の祈祷が般若心経だったと言われています。



今回は、

能 《 葵上(あおいのうえ) 》 の物語を ・ ・ ・


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

  光源氏の正妻、左大臣家の息女の葵上は、

  物の怪に悩まされていました。

  物の怪の正体を知るべく院の臣下
(ワキツレ)

  梓弓(あずさゆみ)の音で霊を呼ぶ「梓の法」の



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            梓弓


  名手の照日(てるひ)の巫女(ツレ)を招き、

  物の怪の正体を明らかにすることになりました。



  すると、

  源氏の愛人であった六条御息所の生霊が

  破れ車に乗って現れ、



葵の上_大槻能楽堂HPより
六条御息所の生霊(前シテ)


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 前シテの
 六条御息所が
 懸ける【 泥眼


  眼に金泥が施されている



  愛を失った悲しみと恨みを葵上の枕元で

  責めさいなみ、幽界へ連れ去ろうとしました。



 ・ ・ ・ ・ ・  後 場 ・ ・ ・ ・ ・


  臣下は急いで、

  比叡山の横川に住む修験道の小聖
(ワキ)

  招き、怨霊退治の祈祷を始めます。


  するとそこへ、

  光源氏の愛人であった六条御息所の怨霊が

  鬼女の姿となって現れます。


「能面の風姿」(東方出版)_葵上
    鬼女の姿となった六条御息所の怨霊

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 鬼女の懸ける
 白般若


  般若面のなかで、
  最も品位の高い面





  恨みの塊となった六条ノ御息所は、

  葵上のみならず祈祷をしている小聖にも

  襲いかかります。


  六条御息所の怨霊は

  ついに法力に祈り伏せられ、
 
  ふと我に返って気付いた浅ましい我が姿を恥じ、

  最後は心を和らげ成仏するのでした。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


物語の中心は、

鬼にならざるを得なかった六条御息所の

恋慕と嫉妬の情です。


余談ですが、

御息所が葵上への嫉妬に悩む直接の原因と

なったのは、

賀茂の祭の車争(くるまあらそ)いに破れたことで、

前場では、

御息所は前半破れ車に乗って登場する想定と

なっています。






能楽《 小督 》と 面 5

先月末に、

彦根・京都の能面探訪をした、最終日は

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 嵯峨野の
    竹林



嵯峨野の能楽の えにし を尋ねました。


嵐山渡月橋の桂川の左岸の少し上流に、

小督(こごう)の局(つぼね)を弔う五輪の石塔があります。

小督の旧跡 DSCF0360[1]








小督の供養塔 DSCF0364[1]
















平家物語 の、

平清盛
によって人生を変えられてしまう、

悲劇の女性が身を隠した地です。



(おもて)から見た、能楽 【 小督(こごう) 】を紹介します。



高倉天皇の深い寵愛を受けていた 小督 の局は、

時の中宮が平清盛の息女、徳子(後の建礼門院)であり、

清盛が 小督 の寵愛を心よく思っていないことを知り、

誰にも知られず嵯峨野の方へ身を隠しました。


天皇はそれを日夜嘆いておられ、

勅命で弾正大弼(だんしょうだいひつ)源仲国に、

小督 を探し出してくるよう命じます。


仲国は、名月の元、馬に乗って

「 小督は琴の名手だから 」 と、

琴の音を頼りに嵯峨野を訪ね歩きます。


  地謡

   やがていづるや秋の夜の
   月毛の駒よ心して。雲井にかけれ時の間も。
   いそぐ心のゆくえかな。



------  中入り  ---------


嵯峨野の小督(ツレ)の隠れ家では、

17 【若女】    栗原富美子








    ツレの小督が
    掛ける【 若女




                                  栗原さん作品 【 若女



悲しい思いを琴の音でまぎらわそうと、

折からの名月に向かって琴を弾きます。


片折戸をしたところというだけが目当てなので、

捜しあぐねます。


やがて法輪寺のあたりで、

「 夫を想いて恋うる、想夫恋(そうぶれん)  を弾く

琴の音を聞きます。


c11-1[1]










案内を請いますが、なかなか家に入れてくれません。

柴垣のもとで露にしおれている仲国を見て、

小督 のトモがとりなし、


小面






   小督のトモが
   懸ける 【 小面







小督 仲国 はようやく対面します。


仲国から、帝の衰えた様子を聞き、

御書を受けとった 小督 はその心を想い、

涙を流します。


その後酒宴になり、

仲国はなごりを惜しみ、笛を吹き、舞をまい

小督 は琴を奏でます。

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      当時
   使われていた
   楽琴(がくそう)



仲国は、「 直ぐに迎えが来ますから 」 と言い残し、


小督 に見送られて都に帰ります。



--------------------


この名所の近くに、天龍寺があり


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 天龍寺の
    庭園




ここの別院の法堂では、

八方睨みの雲龍図が一般公開されていました。

天龍寺_雲龍図















因みに、

平安時代、琴は龍の象徴とされ、雅楽でも使われ、

現在の箏の部分の名称として龍頭や龍尾などの

名残があるそうですよ~ 





能楽《猩々》と面(おもて) 5

今年の桜は、

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 近くの神社の桜
      4/12




気候が良かったせいか永持ちしましたネ~ 


日立では、

4/1~20まで、桜まつり の期間です。

今週いっぱいは、まだ桜の花が楽しめるようです。


気候も良いし、夜桜の花も素晴らしいので、

 「 月、星はひかりさやかに花をさす
     夜の桜、花の酒の宴
               猩々舞
(しょうじょうまい)を舞おうよ 」
 
                            大和樂 花の猩々 より


とばかりに、花とお酒に酔いしれて

乱舞した人も多かったでしょうネ~  




よくオランウータンに間違えられるけど、

中国の想像上の生き物で、海の中に住み、赤い顔に、

赤くて長い髪、

お酒の好きな   猩々(しょうじょう) の舞がそれです 


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能楽五番目物の 猩々(しょうじょう) とは ・ ・ ・




揚子江沿岸の揚子(ようず)の里に住む親孝行な

高風(こうふう)は、ある夜の夢に、

 「 市に出て酒を売れば豊かになる 」

とのお告げを受けました。


高風は夢の告げに従って市で酒を売ったところ、

お告げ通りに富貴の身となりました。


高風が普段通り、市で酒を売っていると、

たびたびやって来ては、

酒を何杯も飲んでもまったく酔わないお客が

現れます。

不思議に思って名を尋ねると、海中に住む 猩々 だと

名乗り、


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      【 猩々 】 の面



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 笑みを
 浮かべる面





酒壺を抱いてそのまま水の中へ消えてしまいました。


            ・ ・ ・


月の美しい夜、潯陽江のほとりで高風が酒を持って

猩々 を待っていると、

猩々 が、

再び水面に浮かび上がってきて不老長寿の薬とも

言われる酒を称え、舞いはじめました。


猩々_「面からたどる能楽百一番」淡交社
 
                         「面からたどる能楽百一番」 淡交社 より


そして高風に、酒が泉のように湧き出る壺を与えます。


それは夢の中の出来事だったのですが、

あとには、

汲めども尽きぬ酒壺が残されていて、

高風の家は末永く栄えたのでした。


                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


といった、祝言能(しゅうげんのう)の一つです。




  猩々 の舞(中之舞)にはいろいろな種類があり、

もっとも代表的なのが 『 猩々乱(しょうじょうみだれ) 』、

又は 『 (みだれ) 』 という曲名に変わるもので、

水上を戯れ遊んでいる様子を表す特殊な足運びが

印象的です。

猩々乱れ_「能楽百十番」平凡社












 


                猩々乱_「能楽百十番」平凡社より




また、

日本の山野草にも 「 猩々袴(しょうじょうばかま) 」という、

ユリ科の植物があります。

猩々袴_植物図鑑 Weblio辞書より






 


 植物図鑑
 Weblio辞書より



花を 猩々 の顔、葉を袴にみたてて付けられた名前

のようです。



能楽「敦盛」と面(おもて) 5

NHK大河ドラマの 平清盛 も、

平家滅亡を迎えてしまいましたネ~  


以前にブログで紹介した 土蜘蛛(つちぐも) は、

清盛が活躍する以前の平安中期の源氏の武将の

お話でした。

今回は 平家物語 に関連する能(約60曲)

中から
平家滅亡後の 源平合戦 に纏わる能楽を

紹介します。




須磨(今の神戸) 一の谷の合戦   で、

源氏の武将 熊谷直実(くまがいなおざね)が、

舟へ逃げようとする武者の姿を見つけ、

呼び止めるとその武者は引き返してきます。

神戸観光壁紙写真集_須磨寺




      須磨寺
     の銅像



                              神戸観光壁紙写真集 より


その武者は、

直実に組み伏せてられて討ち取られてしまします。


この物語は、

源義経の 鵯越(ひよどりごえ)の逆落し と共に

源平の歴史ロマンとして語られていますネ。




直実 との一騎打ちで討たれた年端もいかない

若武者が、

笛の名手とも言われている 平敦盛(たいらのあつもり) で、

清盛の甥(清盛の弟、平経盛の末子)にあたります。




敦盛 ” と云えば、

織田信長が好んで謡い舞った曲が 幸若舞(こうわかまい)

の 「 敦盛 」 で、

    思へばこの世は常の住み家にあらず
        ・ ・ ・ ・ ・ ・
    人間(じんかん)五十年、
    化天(けてん)のうちを比ぶれば、
    夢幻の如くなり
      
・ ・ ・ ・ ・ ・

お馴染みの詞章ですネ 


でも今回は、

大河ドラマ 平清盛 』 のエピローグとして、

能楽の 《 敦盛(あつもり) (おもて) を紹介します。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


直実
は戦場に笛を持参するという 敦盛 の風流さに

感嘆し、敦盛 を討ったことを悔い、

後に出家して蓮生(れんしょう)と名乗りました。


敦盛 の菩提を弔うために一の谷を訪れた

蓮生(ワキ)が回想にふけっていると、

笛の音が聴こえ草刈男たちが現れます。


蓮生は男達に

 「笛を吹いていたのはあなた方の仲間か」 と問うと、

中の一人(前シテ)が笛にまつわる話をし、

 「自分は 敦盛 に縁のある者で、
  十念( 南無阿弥陀仏を十回称えること)を授けて欲しい」

と頼みます。

蓮生が経をあげると、

男は、敦盛 の化身であることをほのめかして姿を

消しました。

        ・ ・ ・ (中入) ・ ・ ・

その晩、

蓮生が 敦盛 の菩提を弔っていると、

その霊(後シテ)が往時の甲冑(かっちゅう)姿で現れます。

【十六中将】b_11.22




  敦盛の霊が
  懸ける
  【十六中将】の面


【十六中将】_11.22














敦盛 の霊は平家一門の栄枯盛衰を語り、

笛の名手だった生前の最後の宴を懐かしんで

[中之舞]を舞い、合戦での討ち死にの様子を

再現して見せます。

「能百十番」(平凡社)_敦盛







  敦盛の霊(後シテ)
      の[中之舞]




 

 
                        「能百十番」_平凡社 より


そして敵に巡り会えたと仇を討とうとするが、

蓮生の弔いを受けてもはや敵ではないと悟り、

極楽では共に同じ蓮に生まれる身になろうと

云い残し消え去ります。


                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


昨日の敵は今日の友

十六歳でこの世を去った敦盛と、

その敦盛を源平の合戦で討った熊谷直実。


この二人が時を経て、

僧と亡霊と云うかたちで再会した二人に仏法を

縁とする友情が生まれます。




今回は特別に、

平家ゆかりの 厳島神社 ” の能舞台で

演じられる 《 敦盛 も動画でご覧下さい。



広島の稲垣様から動画を拝借させて頂きました。
 ブログ⇒『 不良おやじのパラグライダー人生 』




雅勒も 安芸の宮島 には二度程行っていますが、


厳島神社_'08.11




  ’08 11月
      撮影


厳島神社能舞台_'08.11



  重要文化財
  の能舞台





今度は、

潮が満ちて海間に浮かぶ 厳島神社 能楽堂

観てみたいですネ~








    能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
               ⇒ こちら
  を覗いてみて下さい。

能楽「土蜘蛛」と面(おもて) 5

NHK大河ドラマ 平清盛 も、
いよいよ大詰めを迎えましたネ 



今回は、平家物語 剣の巻 に出てくる
源頼光 ( みなもとのよりみつ : 謡の中では らいこう  ) が、土蜘蛛(つちぐも)の精を退治する話を載せてみました。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


武勇の誉れ高い源頼光(らいこう)が病にふせているところ
へ侍女の胡蝶(こちょう)が薬をもって見舞い、カづけますが一向に快復のきざしが見られません。

小面







    ツレの胡蝶が
    懸ける【小面






心身ともに衰弱した頼光は、死期を待つのみ と 嘆きます。



夜半すぎ、まどろむ頼光の枕元に、あやしい僧が現れ

  「 我が背子が 来べき宵なり ささがにの、
           蜘珠のふるまい かねてしるしも 」

と古歌を詠じ、
汝の身を苦しめるのは我なりとばかりに千筋(ちすじ)
糸を吐きかけ頼光に迫ります。


頼光が枕元の名刀膝丸(ひざまる)を抜き放って斬りかかると蜘蛛の化身は消え失せます。


            ・ ・ ・


駆けつけた従者・独武者(ひとりむしゃ)は、
他の従者たちを連れて土蜘蛛の跡を追い
大和葛城山中に土蜘蛛の古塚を見つけだします。


顰(しかみ)





  後シテの土蜘蛛の精が
  懸ける【 (しかみ)
の面





塚を崩しにかかると、土蜘蛛の精は火焔を発し、
千筋の糸を吐きかけ激しく抵抗しますが、

土蜘蛛_「能百十番」平凡社









 
              「能楽百十番」平凡社 より


能楽・土蜘蛛



   桜川能
   《土蜘蛛





遂には土蜘の精を斬り伏せます。


                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


頼光の病気はその後すぐに回復し、
土蜘蛛を討った名刀 膝丸 は以来、「 蜘蛛切 と呼ばれます。

そして、この土蜘蛛の正体は、
神武天皇が討った土豪の土蜘蛛の怨霊だったという説話の能でした。




後半の土蜘蛛退治は蜘蛛の巣が飛び交い圧巻です。

見た目にも華やかなショー的な能で、物語も劇的で
詞章(ししょう)もわかり易く人気曲で、野外能でも上演が多いようです。


お正月の催し物には、ピッタリかもしれませんネ 




ここで、
大河ドラマにも度々登場する、源氏重代の刀 友切 ですが、
歌舞伎の  戻橋 等でお馴染み、四天王の渡辺綱
(わたなべのつな)が京の一条戻橋で鬼の腕を斬った時に
使われたのがこの刀なんです。

katanatyu[1]




元々は
  髭切 と呼ばれていた物を戻橋の一件で 鬼切  
為義の頃には
夜に獅子の鳴くような声で吠えたので 獅子ノ子

更には長さの違う兄弟刀の長さが短くなったのがこの刀の仕業と 友切 」、

と次々と名前が変わっていったようです。




源氏のルーツは清和天皇にありますが、
初めて武士団を形成したのは、天皇の孫にあたる
源満仲(みなもとのみつなか) であったと云われています。

その 満仲 の長子が 源頼光 で、父の摂津国多田(兵庫県川西市多田)の地を継ぎ、摂津源氏の祖となりました。



かなり前ですが、
満仲 に付いて面白い記事を読ませて頂きました。
シャンソン歌手の別府葉子さんのブログです。 

面白いエピソードが載っていますヨ~  ☞  こちら 

意外にも、歴女のようですネ。





能楽「鞍馬天狗」と面(おもて)4

このシリーズも、いよいよ最終章の五番目物の切能(きりのう)まで来ました。

切能とは、能において天狗天神雷神龍神などがシテ(主役)となる演目で、五番立において一日の催しの締めくくりを飾り、エネルギッシュに演じられることから切能と呼ばれます。


今日は牛若丸でお馴染みの、【 鞍馬天狗 】の解説をしましょう。
昔の映画のヒーロ「鞍馬天狗」の源流でしょうかネ?

能絵_鞍馬天狗











春の京都、
鞍馬寺の僧が稚児(ちご)を連れ花見に出かけると、一人の山伏が現れ興(きょう)を妨げた為、ひとり稚児を残して僧達は去ってしまいます。

一人その場に残った沙那王しゃなおう:牛若丸)に、山伏は鞍馬山の大天狗であると名のり、兵法を授けるので平家を滅ぼすよう勧め、再会を約束して姿を消します。



後場(のちば:後半の場面の大天狗には、通常では赤頭(あかがしら)が使われます。

大べし見
天狗の総大将が
  掛けるにふさわしい
  《大べし見》 の面

  ( べし見とは唇を強く
    結び、眉をしかめた
    表情をいいます )


深見東州HP




        赤の大天狗 ⇒



        深見東州氏のHPよりお借りしました 



また、小書(異式演出)では白頭(しらがしら)で、杖をついて老(おい)たけた大天狗の様相となり、面(おもて)も 《 悪尉 》 系が使われます。

悪尉べし見a
 
 ⇐ 白頭で使われる
  《べし見悪尉》 の面 

  ( 悪尉とは強く恐ろしい
    雰囲気のある老人 )






粟谷能の会HP
 ⇐ 白頭の大天狗


粟谷能の会HP2 - コピー








         粟谷能の会のHPよりお借りしました  ↑






前場(まえば)と後場の合間には、間狂言(あいきょうげん)の木葉天狗こっぱてんぐ:アイ)の立喋りがあります。

「大天狗が牛若に兵法を教えるので、自分たちが太刀打ちの相手をすることになった」 と ・ ・ ・


鳶_狂言面
 ⇐ 木葉天狗が掛ける
   《
(とび)》の狂言面

間狂言_鳶










大天狗は、兵法の奥義を伝授された漢の張良(ちょうりょう)の故事を語り聞かせます。
そして兵法の秘伝を残りなく伝えると、牛若丸に別れを告げます。

将来の平家一門との戦いで必ず力になろうと約束し、大天狗は夕闇の鞍馬山を翔け、飛び去っていきます。



大天狗の勇壮な姿と豪快な動きが切能としての最大見せ場となっています。






能・狂言面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
   (
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                     を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
               第7回  狂言「節分」と面      ’11  2/ 1
               第6回  能楽「道成寺」と面    ’11  1/21
               第5回  能楽「蝉丸」と面     ’11  1/ 4
               第4回  能楽「羽衣」と面     ’10 12/ 1
               第3回
  能楽「清経」と面     ’10 11/ 1
               第2回  能楽「高砂」と面     ’10  9/30
               第1回  
能楽「翁」と面       ’10  8/18


狂言「節分」と面(おもて) 5

能とあらゆる点で対照的である狂言は、

主に能と能の合間に上演される「本狂言」と、能の中に登場して人物を紹介
したり、舞台の展開を説明したり、時には、面白おかしくストーリー
を盛り立てる役(アイ)もこなす「間狂言(あいきょうげん)」があり、能の演出をより際立たせます。

 

2月は “ 節分 ” の月なので、【節分】という狂言に付いて解説しましょう。 

 

季節の変わり目は、とかく体調を崩しやすいですネ~。

昔の人々は、
この時期、疫病神(やくびょうがみ)=『』がやって来て悪い病気をはやらせると考え、節分に鬼を追う風習をあみ出したようです。

                                                  

                                                  
 -鬼と煎り豆の民話- 
   
むかし、ある年のこと、
   日照り続きで稲が枯れ始めてきた。

    困りはてた百姓が「誰でもよいから、雨を降らせてくれたら、
   一人娘のおふくを嫁にやるがなぁ」とつぶやいた。
   すると鬼があらわれ、「お前が今言ったことは本当か」という。
   「田んぼが豊作になるように雨を降らせてくれたらな ・ ・ ・」
   と約束する。

   
鬼は実際に雨を降らせ、村は豊作になってしまいました。

   すると、鬼があらわれ「約束どおり、おふくを嫁にくれ」と云う。
   おふくは、鬼のおかげで村が救われたと鬼の嫁になる。
   おふくが嫁に行く日、母親は菜の花のタネをおふくに持たせ、
   鬼のところへ行く道すがら、タネをまくように言いつける。
   
   おふくは山深い鬼のところへ嫁いでいった。

   嫁いだものの、鬼は酒ばかり飲んで、
   おふくは辛くてたまりません。


   春になり雪がとけた頃、おふくが外へ出ると、
   菜の花が列をなして美しく咲いている。
   おふくは母親が恋しくなり、菜の花の列をたよりに逃げ帰る。

   「おふくはどこだぁ」とおふくを追ってきた鬼に、
   母親は煎った豆を戸のすき間から投げ、この豆を植え、
   花を咲かせて持ってくれば、おふくをお前にやろうという。
   
   鬼は豆を育てようとするが、煎った豆は芽が出ない。
   翌年も、その翌年も、母親のところへ来て、煎り豆をもらい、
   育てようとするが芽が出ない。
   そのうち、鬼はこなくなった。
                  谷真介著の「鬼といりまめ」絵本より

 これが節分の豆まきの始まりだそうですヨ (^‐^)v



さて、本題の狂言の節分は、

節分の夜、夫が出雲大社へ年越しのお参りに出かけ、女房が一人で留守を守っている。
女房は、節分には蓬莱(ほうらい)の島に住む鬼がやってくるというので、(ひいらぎ)をさして戸締りをする。
 
柊
 ⇐ (ひいらぎ)


柊の花


   柊の花
   この時期咲いてますヨ~




そこへ蓬莱の島からやってきた鬼。

武悪
⇐ 【節分】で鬼が掛ける
      《 武悪 》 の面

   鬼の恐ろしさよりも滑稽さを
   強調した面で、
   目尻の垂れ下がり ・鼻・瘤
   がデフォルメされている。

buaku-yoko

 









遠いところからやってきたので、腹が減ったといって人家を探すと家があるので覗き見てみるとが目に刺さってしまう。
怒ってを叩き落して覗きみると、中にひとりで女がいる。

女の家の戸を叩くが、女は夫が留守だからと言って開けてはくれない。

観念した女が戸を開けると外には人の姿が見えない。
鬼は蓬莱の島から持ってきた姿の見えなくなる箕(みの)を着ていたのである。

箕を脱いで、再び女に戸を開けさせる。
戸を開けるとそこに鬼がいるので、女は大層驚いて帰ってくれというが、鬼は腹がへったので何か食べさせてくれたら帰るという。

女が麦を出すと食べられないといって押しやってしまう。
女は怒るが、美しい人妻に一目惚れした鬼は一向に気に止めず、恋の小歌を歌いながら女を口説き始める。
女は「本当に自分に惚れているのなら、宝物を差し出せ」と云う。

鬼は蓬莱の島から持ってきた隠れ笠隠れ蓑打出の小槌を差し出して、家の中にいれてもらう。

鬼は大よろこびで亭主気取りでごきげん。

節分

節分_1



     ↑ (財)地域創造のHPより
            お借りしました
 

女は頃はよしと、煎り豆をとり出し「福は内、鬼は外」と鬼に投げつけて鬼を追いだしてしまう。

鬼は、あわてふためき逃げ去っていくのでした。






能・狂言面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
   (
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                     を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
               第6回  能楽「道成寺」と面    ’11  1/21
               第5回  能楽「蝉丸」と面     ’11  1/ 4
               第4回  能楽「羽衣」と面     ’10 12/ 1
               第3回
  能楽「清経」と面     ’10 11/ 1
               第2回  能楽「高砂」と面     ’10  9/30
               第1回  
能楽「翁」と面       ’10  8/18




 

能楽「道成寺」と面(おもて) 4

能楽の四番目物「 雑能(ざつのう) 」の大曲は、なんといっても歌舞伎や舞踊などでお馴染みの道成寺(どうじょうじ) 】でしょう。

今回は【 蝉丸(せみまる) 】に引き続き、「 雑能 」を紹介します。



道成寺は和歌山県の日高郡日高川町にある天台宗の寺院で、「安珍・清姫伝説」で有名な古刹です。

s_saigoku05_01a[1]
 道成寺の山門


S3007[1]



   本堂そばの
     シダレ桜 ⇒


「安珍・清姫伝説」は道成寺の僧・安珍(あんちん)に恋をした清姫が自分を裏切った安珍を追いかけて、蛇になって川を泳いで渡り道成寺の鐘の中に隠れていた安珍を鐘といっしょに焼き殺すという伝説です。


image[1]









紀州の道成寺では、長いこと釣鐘が無かったので釣鐘を再興し、その供養をすることになります。

住職(ワキ)は能力(のうりき:寺男)(アイ)に、その旨と故あって女人禁制であることを触れまわるように申し付けます。

そこへ一人の白拍子(前シテ)が現れ、鐘を拝みたいと強く望みます。
いったん断った能力も、舞を舞うことを条件に境内に入れてしまいます。

深井-横
 ⇐ 白拍子(前シテ)が掛ける
   《深井(ふかい)
》の面



「能楽百一番」(淡交社)_道成寺・前





      蛇の化身の
        白拍子
(しらびょうし) ⇒ 
 
 
                     
                        
                       「面からたどる能楽百一番」(淡交社)より
 

喜んだ白拍子は、烏帽子(えぼし)を借り、松のほかには一面の桜の中で乱拍子(らんびょうし)を踏み、謡い舞います。
そして隙をみて、鐘を落としその中に姿を消してしまいます。




住職は、
「一人の山伏をこの寺の鐘の中に隠したが、彼を追ってきた娘が蛇体となって鐘を取り巻き、山伏を取り殺してしまった」という、この鐘にまつわる昔話を語ります。

先刻の白拍子もその娘の怨霊(おんりょう)であろうと、ほかの僧侶と共に祈り始めます。


すると鐘があがり、その下にうずくまる蛇体の女(後シテ)が姿を現します。

般若
 ⇐ 後シテが掛ける
  《般若
(はんにゃ)の面


 般若-a







knd_djj「能楽百一番」(淡交社)_道成寺・後






 

                    「面からたどる能楽百一番」(淡交社)より



僧たちの必死の祈祷に蛇は自分の吐く炎に身を焼き日高川の深淵に姿を消します。





死んでもなお残る “ 女の執念 ” って、恐ろしいものですネ~ 



 注).白拍子には流儀により、《曲見(しゃくみ)が掛けられることも
    あります。
    また、観世流では白拍子に《近江女が掛けられます。


能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。


    < シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
               第5回  能楽「蝉丸」と面    ’11  1/ 4
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能楽「蝉丸」と面(おもて) 4

能楽 “ 五番立 ” のうち四番目物は「神・男・女・鬼」のいずれにも属さない曲趣のものすべて ここに入れることから、「 雑能(ざつのう) 」 の名があります。

今年最初の観賞は、雅勒の年賀状にも使用した 雑能の【 蝉丸(せみまる) 】 を題材にします。



蝉丸 》 の宮(ツレ)は、醍醐天皇の第四皇子でありながら幼少時より盲目であったため、剃髪(ていはつ)の上、逢坂山に捨てられます。
蝉丸-a







蝉丸 》 は前世の報いとあきらめ、同情者の博雅三位はくがのさんみ 間狂言)が設えてくれた藁屋(わらや)で、心の慰みに琵琶を奏でて日々を送ります。


蝉丸
 ⇐ ツレの《 蝉丸
       専用面

栗谷能の会







                     
                    ↑ 栗谷能の会のHPより
                                    使わせて頂きました




一方、髪が逆立つ病のために狂乱し彷徨(さまよ)っていた姉宮の 《 逆髪(さかがみ) (シテ) は、琵琶の音を聞き、懐かしい音に足を止めます。

かけられた声に 《 蝉丸 》 と知った 《 逆髪 》。

逆髪
 ⇐ シテの《逆髪
       専用面

岩井氏のHP










姉弟は再会を喜びつつも、互いの身の上を嘆き合い、そして名残を惜しみながらも、再び 《 逆髪 》 は彷徨(ほうこう)の道を行き、 《 蝉丸 》 は見えぬ目でそれを見送ります。


     花の都を立ち出でて、
         憂き音に鳴くか賀茂川や
             末白河をうち渡り ・ ・ ・

       狂女なれど心は清瀧川と知るべし



小倉百人一首に登場する 《 蝉丸 》 は、 『 今昔物語 』では宇多法皇の皇子「敦実(あつざね)親王」に使える雑色(ぞうしき)となっていますが、能ではずいぶん身分が高くなっています。

 
百人一首
 これやこの 
  行くも帰るも わかれては
     しるもしらぬも 
           逢坂のせき
 
                       
蝉丸







 


能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室
http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html
                  を覗いてみて下さい。


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能楽「羽衣」と面(おもて) 5

美しい女性が優雅な美しい歌や舞を見せ、ときには高貴な男性や男姿の草木の精などが主役になる能が三番目物で、「鬘能(かずらのう)とも呼ばれ最も幽玄美溢れる曲柄です。

「鬘能」のなかでも、【羽衣(はごろも)は昔話でもお馴染みの『天女(あま)の羽衣』伝説を能にしたものです。

昔話では、天女は羽衣を隠されてしまい、泣く泣く人間の妻になるのですが ・ ・ ・



のどかな春のある朝、
三保(みお)の松原の漁師、白竜(はくりょう)が漁から帰ってきます。

すると、辺り一面に花振るなか妙なる音楽が聞こえよい香が漂っています。 近くの松の枝には美しい衣が掛っていたので家に持って帰り家宝にしようと考えます。

 そこに天女が現れ、その衣は“ 天女の羽衣 ” といってたやすく人間に与えるものではないので返して欲しいと頼みます。
白竜は、“ 天女の羽衣 ”と聞いて、なおさら返すことはできないとつっぱねます。

天女は「それがないと、天に帰れない」と嘆き悲しみます。

「羽衣を返したら、舞を舞わずに帰ってしまうだろう」と言う白竜に、
天女は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と返します。
正直者の白竜は、そんな天女の言葉に心を動かされ、「羽衣を返す代償に天人の舞楽を見せてくれ」と言い羽衣を返すのです。
羽衣-a

         白竜から羽衣を
            返してもらう天女
 ⇒

羽衣










天女は喜んで承諾し、返してもらった羽衣をまとい、
月宮殿の様子を表す舞や、三保の松原の春の景色をたたえる舞いを舞いながら空高く昇り、やがて富士の彼方、霞にまぎれて消えていきます。




羽衣】や松風等の鬘物の演目で掛けられる、若い女性の面は流派によって異なります。

若女

⇐ 観世流で使用される
          若女


節木増



   

      宝生流で使用される
            《
節木増
 ⇒





小面
⇐ 金春や喜多流で
   使用される 《
小面



孫次郎






      金剛流で使用される
            《
孫次郎 ⇒











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