雅勒の散歩路

能面師「雅勒(がろく)」が 能楽・能面及び、花木や野鳥・蝶等に関するHP番外編の記事を
“散歩”のような気軽な気持ちで、不定期に掲載しています。

能・狂言面製作工程

テーマ面の金冠 

コロナウイルスの緊急事態宣言も解除され

少しづつ今までの日常が戻りつつあります。

P5272459









学校も今週から、登校が始まったようです。


NHK文化センターの講座も来月6月から

再開します。


再開初日の能面教室に、

今年のテーマ面 【 泥虎 (でいこ) の試作と

【泥虎】_正面


金冠 が間に合いました。


金冠の製作にあたり、製作手順書も作成しました。


 『 金冠の製作工程

 1. 眼型の型取り
01.型取り(2)


  彫り上げた
  能面の目に
  銀紙(アルミホイル)
  をあて、
  型取りをする。
 




 2. 銅板の焼きなまし
03.焼きなまし



  銅板を柔らかく
  して成型を
  容易にするため、
  焼きなましをする。





 3. 銅板に眼型を写し取る
05.型当て

  アルミホイルの
  眼型を平坦に延ばし
  銅板に写し取り

  金切り鋏で
  銅板を切り取る。





 4. 眼型の成型
07.成型


  成型台の窪みに
  目型を置き、
  成型棒で成型をする。





 5. 金冠の研磨
09.荒研ぎ

  #130のサンドペーパを
  使って完全に凹凸が
  無くなるまで研磨する。

  凹凸が無くなったら、
  #400 のサンドペーパ
  で仕上げる



 
11.仕上げ研磨

  更に真鍮・銅用の
  研磨剤で仕上げる。








 6. メッキ処理
13.金メッキ


  下地にニッケルメッキ
  を施し、
  金メッキをする。




         
    銅板で金冠を製作した場合、
   金箔が剥がれた場合などの事態を考慮して、
   下処理で金メッキを施しておく。

 7. 金箔貼り
21.箔押し準備







23.箔押し仕上げ








 完成

30.金冠の完成


資料作成

 
キャプチャ_2020_05_26_12_58_20_747




久々に生徒さん達と

顔を合わせるのが楽しみです。 







「面を打つ」_男面の彩色 5

   「面(おもて)を打つ」_下塗り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。



男面の彩色に入りますが、
この 【 十六中将(じゅうろくちゅうじょう) 】 は平家の公達の
(おもて)なので極めて女面に近い彩色となります。


下塗りは、
梨地無しの無垢肌で、額(ひたい)は左右対象に斜めの
軽い 刷毛目 で仕上げてます。

下塗り地肌_11.16




下塗り地肌(2)_11.16















上塗りは、一部に 刷毛目彩色 を施し、全体的には 打ち胡粉   による軽い 梨地 で仕上げます。




 1).上塗り用の 胡粉顔料 で色胡粉を作る。

    水干顔料(すいかんがんりょう) の調合
彩色顔料_11.16

       ・和黄土 
       ・岩群緑(淡)
       ・山吹





    胡粉に調合した顔料を入れて、
    更に 空摺り する
色胡粉_11.160








    色胡粉を膠(にかわ)液で溶いて、“ 通し に掛け
    ぬるま湯で濃度を薄めに調整をする





 2).3種類の平筆で上塗りをする。

色胡粉と筆_11.16

     中央の穂先を
     つめた筆で、
     刷毛目を際立
     たせる    








    良く乾かしてから塗りムラの無いように、
    上塗りは2~3回する。

                 (今回は、3回塗り)




 3).ぼかし筆で色胡粉を打ち付け打ち彩色て、
    軽い梨地を施す。




    一度の打ち込みでは、凹凸が出ませんので
    多少湿り気のある状態で、3~4度程打ち
    付けます。

梨地肌_11.17










 
                 クリックして拡大してみて下さい  



 4).網ぼかし

    ヤシャブシ液に、赤味を足す
ぼかし_ 11.18









    軟らかいぼかし筆で、軽く網を撫ぜるように
ぼかし(2)_ 11.18


      穂質の軟らか
      い方が粒子が
      細かくなる




 5).軽い研ぎ

    400#のサンドペーパーを2枚摺り合わせて
    目の細かいペーパに仕上げる
摺り合わせペーパ








    指の腹で、そっと撫でるように ・・・

ぼかし後の研ぎ_11.18









 6).梨地の凸部に タンポ打ち

タンポ打ち(2)_11.18


     2色の古色
     作る




タンポ打ち(3)_11.18



     木綿布の
     タンポで
     古色を付ける





   
    面縁や凸部を濃い目の赤味古色を施し、
    凹部はくすんだ古色を施す





 7).コーティングを兼ねた、仕上げ塗り

    上塗りで使った色胡粉液を、布で濾(こ)してから
    更に濃度を薄く調整する

上塗りの上澄液_11.18








上澄液で塗る_11.18










 8).目の墨入れ

    下塗り胡粉に墨を入れて、薄墨を作る


目の墨入れ_11.19


       薄墨と
       蒔絵筆





目の墨入れ(3)_11.19



       先ずは、
       薄墨で






    濃い墨を入れる

目の墨入れ(4)_11.19


      眼(まなこ)の
      部分は下地色
      を残す



    人の眼とは逆に、白眼部分に墨は入ります




 9).鉄漿(おはぐろ)を入れる


鉄漿_11.19

      歯先は薄墨
      で根元は黒く





     通常の男・女面は、上歯だけです。


   



 10).唇の紅差し

     男面なので、橙色系に墨を混ぜてクスミを出す

紅差し(2)_11.19








紅差し(4)_11.19














 11).毛書き

毛書き_11.19

      青墨に
      少し黒墨を
      足す 
     






毛書き(2)_11.19

      冠部




 
毛書き(3)_11.19

      細めの
      毛書き








 12).眉(まゆ)入れ


眉入れ_11.19


      3段階の
      濃さの墨






眉入れ(2)_11.19


      第1段階
      薄く輪郭を
      タンポ打ち







眉入れ(3)_11.19


      筆で
      斜めに薄く
      色付け




眉入れ(4)_11.19



      ウッスラと
      輪郭付け





眉入れ(5)_11.19
  


      布で研ぐ







     以降、順次墨を濃くしながら、根気よく眉を
     入れていく
     
     急ぐと、胡粉が剥離(はくり)するので、注意が
     必要




 13).(きず)彩色

     荒目のサンドペーパーで、冠部と毛、目の際、
     唇(くちびる)に疵を施して、

     ヤシャブシ液で古色出しをする



傷彩色_11.19
 

      冠部の
      疵付け






唇縁の古色付け_11.19




      唇の際の
      古色付け










以上で、ほぼ完成します。


更に仕上がりの全体の色調を見て、再度ぼかしや
タンポ打ちで色のバランスを整える場合もあります。



20



十六中将(目)_11.20






十六中将(左眉間)_11.20















 

十六中将(口)_11.20












十六中将の面裏_11.20






      面裏









平家の若き公達(きんだち)の表情が、窺(うかが)えましたでしょうかネ~ 




通常の女面の彩色は、
冠部と毛書きの形を除いては、ほぼ同じ様な彩色となります。



これをもちまして、
(おもて)を打つ 」シリーズの完結といたします。


十六中将 】の作品は、
HP 雅勒の庵 』_作品展示室の掲載してありますので
面の説明や詳細画像はそちらを参考にして下さい。 
                         ☞ こちら




このシリーズ、

雅勒 の教室の生徒さんや面打ちを始めて間もない人達の参考になれればいいのですが ・ ・ ・







< 過去の関連記事 >

   ・ 女面の見極め      ’11 6/ 8   ☞ こちら


「面を打つ」_彩色 5

   「面(おもて)を打つ」_彩色準備 の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。



これから彩色する能面は、

女面1面と男面2面、そして翁系の計4面ですが、
しばらく彩色をしていなかったので、色感を取り戻す為に比較的簡単な彩色の 【 父尉(ちちのじょう) 】 から一面ずつ仕上げていきます。



 1).上塗り用の 胡粉 顔料 で色胡粉を作る。

    上塗り用具_11.09材料と道具

     ・上塗り胡粉
     ・乳鉢と乳棒
     ・水干顔料
     ・計量匙
     ・膠(にかわ)
     ・薬包紙




   上塗り用の胡粉は小さな薄い板状に固まっている
   ので、乳鉢を使ってなるべく細かい粒子になるよう
   “ 空摺り(からずり) する。

上塗り胡粉_11.09









胡粉の空ズリ_11.09












   水干顔料(すいかんがんりょう) の調合

顔料の調合_11.09

       ・淡口黄土 
       ・岱赭
       ・鶯茶緑




顔料の混合_11.09










    胡粉に調合した顔料を入れて、更に 空摺り する

上塗り胡粉の調合_11.09


     
       小匙2杯
          程度




色胡粉_11.09

        
       全体が薄く
       色付くまで
       空摺り する





    色胡粉を膠(にかわ)液で溶いて、“ 通し   に掛ける

色胡粉を溶く_11.09







 
通しで濾す_11.09
 
      下塗りよりも 
      細かい(#150)
      通し で濾す





    ぬるま湯で、濃度を薄目に調整

薄目に調整_11.09










 2).平筆で上塗りをする




    塗り終えた直後は、色がかなり濃くみえますが、
    乾いた時点の色が本来の色です


初回の上塗り_11.09


    良く乾かしてから塗りムラの無いように、
    上塗りは2~3回する。

                 (今回は、2回塗り)




 3).サンドペーパーで研ぎ出し


ペーパーで砥ぐ_11.10

      目の細かい
      ペーパー(#400)
   
      で軽くなぜる
      程度に ・ ・ ・






        研ぎ上りの状態

研ぎ上がり_11.10







 4).網ボカシで古色付けをする


    ヤシャブシ液にケーキカラーで古色を調整

古色の調合_11.10


      多少、
      赤味を足す







 
   面の縁と 額(ひたい)や鼻・頬のコブ等凸部を
    重点的に古色をかける




    網ぼかし により、梨地の凹部に古色が掛る





 5).タンポ打ち で、さらに濃い目の古色を付ける
    
タンポの絞り_11.10

      木綿の布に
      古色液を浸み
      込ませて、
   
      よく絞る



古色付け_11.10

      梨地の凸部に
      古色を打つ





古色の研ぎ_11.10
 
      9割方乾いたら
      布で研ぎ上げる





    ここまでで、
    上塗り色・薄めの古色・濃い目の古色の三段階
    の色調で彩色されました。





 6).最後にコーティングを兼ねた、仕上げ塗りをする

    上塗りで使った色胡粉液を、布で濾(こ)してから
    更に濃度を薄く調整する
   
上澄み液_11.10

      布濾し





上澄み液で塗る_11.10







    よく乾かしてから、再び布で強めに研ぎ上げて、
    塗りの段階は終了です。
 

    こんな状態に仕上がります

皺コブ





 7).冠(かんむり) の墨入れ


墨掏り_11.10

      中国墨と青墨
      をブレンドして
      摺る




         一般的な日本の墨は膠(にかわ)の成分が強く、
         艶(ツヤ)が出過ぎる為、能面の毛書きなどには、
         膠成分の少ない中国墨を使う


冠部の彩色_11.10


      冠部分




 
くり目の墨入れ_11.10
      くり抜き目の
      中に墨入れ








 8).唇の紅差し

朱墨を膠でする_11.10
 
      濃い朱墨を
      膠で摺って

      墨を混ぜて
      調整する



紅差し_11.10











 9).最後に冠下の毛書きと髭を書き入れ、
    眉と顎髭を付けて、切り顎を繋繋ぐ。

ボウボウ眉


      ボウボウ眉




顎つなぎ



      切り顎の
         繫ぎ





 10).全体の様子を見て、傷彩色 を施す。

冠部の傷彩色_11.10


      ボールペーパ
      で傷を付ける 



 
冠部の傷彩色(2)_11.10


      ヤシャブシ液を
      塗り古色付け      




   わずかな傷で、趣が変ります

冠部



これで、翁系の 【 父尉 】 が完成です。

父尉_完成


父尉_完成(2)父尉_面裏
















このシリーズも、
彫り から 彩色 まで能面製作の一通りの工程を紹介しましたが、

翁系は、ある意味特殊な面で彩色・工作も特殊です。



NHKの大河ドラマの 『 平清盛 』 も終盤に差し掛かったことですし・・・

平家ゆかりの男面、 十六中将(じゅうろくちゅうじょう) 】 の彩色をもって (おもて)を打つ 」シリーズの完結としたいと思います。









「面を打つ」_彩色の準備  4

   「面(おもて)を打つ」_下塗り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


翁系の面の彩色は、“ 梨地 を活かした彩色が多いので、今回の 【 父尉(ちちのじょう) 】 は強めの梨地(柚子地に近い) 研ぎ で仕上げることにしました。

但し、
モデルとした中村直彦氏のものは、普通の (いろ)彩色 です。


img358



  モデルにした
  【 父尉 の画像






       井伊家秘蔵
       「能面能装束展」図録 より








 1).下塗りの胡粉液を濃い目にする

胡粉_11.06

    絵皿に取り
    膠を増量する










 2).スポンジで梨地を打つ

スポンジ_11.06

   キッチンスポンジ
   を切ったもの










   このような状態に仕上げる。

梨地_11.06 


梨地(2)_11.06

梨地(3)_11.06











これで、上塗りの準備は完了ですが、
最後の彩色の前に、もう一仕事あります。


しばらくは、美容師のお仕事です (笑)




翁系の特徴でもある、ボウボウ眉(まゆ) 顎髭(あごひげ) の工作です。




ボウボウ眉は、ウサギの毛のボンボンをバラして2個作ります。
ウサギの毛


  通販で購入した
  アクセサリ用の
  ボンボンを分解





ウサギの毛染


  面の彩色に合わせ
  ヤシャブシ液で染色
      (1時間程)





顎髭は、
馬の たてがみ を使い2mm程の束を7束作ります。
顎髭の毛染



  ヤシャブシ液で
  煮沸しながら染色






ようやく、彩色の準備が整いました。

工作品

顎繫ぎ紐は、
ホームセンターで薄茶の 組紐 を購入



翁系の 【 白式尉(はくしきじょう) と  黒式尉(こくしきじょう) の場合、
ボウボウ眉には、麻を束ねて打ち広げたものと、顎繫ぎ紐には麻紐を使いますが、

父尉 】 の場合、家長的な尊厳を表現していることを意識して少し贅沢な装飾品を揃えてみました。


次回はいよいよ、 【 父尉 】 の彩色で完成になります。




< 過去の関連記事 >

   ・ 翁面の工作と系譜      ’12 10/ 7   ☞ こちら
   ・ 能楽「翁」と面(おもて)        ’10  8/18   ☞ こちら




「面を打つ」_下塗り 5

   「面(おもて)を打つ」_裏面処理 の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


面裏の漆が十分乾いたことを確認してから、
彩色の 下塗り にはいります。




下塗り に必要な道具や材料は、

下塗り用具・材料_10.25
  ・(にかわ)
  ・盛り上げ胡粉   
 
  ・乳鉢と乳棒
  ・平筆(大・小)
 
  ・通し(100番)
  ・ビーカー
  ・メスシリンダー

  ・電気コンロ




 1).(にかわえき)を作る

膠原液_10.25
     鹿膠の原液と
     50℃程度の湯
     を1:3の割合で
     薄める




 
膠溶液_10.25



     埃が入らないように
     ラップで蓋をしておく







     一般的には、固形の粒膠60℃の湯で15~20分位で
     溶解させた溶液を使いますが、
     雅勒の場合は、保存性が高く簡単に溶解出来るゼリー状
     の
鹿膠(しかにかわ)を使います。



 2).胡粉(ごふん)団子を作る

盛上げ胡粉_10.26


     この量で、
     一面分の
     見当
 
     (木匙、5杯)


胡粉の粉ね_10.26


     小匙で、
     5~6杯の
     膠液を混ぜる





胡粉の粉ね(2)_10.26



     ボソボソな状態
     で胡粉と膠液を
     混ぜる

      (蕎麦打ちの要領)



百叩き_10.26

    団子状に
    まとめる

    堅さは、
    耳たぶ程度
 


     この状態で乳鉢に叩き付けて、胡粉の中の空気を
     抜いて、膠とよく絡ませます。
     この作業を 百叩き(ひゃくたたき) と言います。

     




 3).胡粉(ごふん)膠液(にかわえき)で溶く

手練り_10.26

    手捏(てこね)
    棒状に伸ばす





アクだし_10.26

    大豆くらいの
    粒に分けて
    ぬるま湯を注ぎ
    アク抜きをする




膠で溶く_10.26


    水をきり
    膠液を注ぐ
    



 
溶かし_10.26


    指の腹で
    胡粉の粒を
    膠液に溶かす




濾し_10.26


    100番の“通し”で
    濾して出来上がり








 4).胡粉液 の濃度を調整する

濃度の調整_10.26

    出来上がった
    胡粉液にぬるま湯
    と膠液で濃度を    
    調整 


 

濃度の調整(2)_10.26

    筆先からの
    垂れ具合で判断


    ( 経験的に ・・・ )






 5).胡粉液 を木地に馴染ませる

馴染ませ_10.26

       
    木地に押し付ける
    ようにムラ無く塗る


    この時の胡粉液は
    通しに残った胡粉を

    膠液で洗った濃い目
    のものを使う







 5).下塗り

    “ 刷毛返し は何度もやり過ぎないで、
    胡粉の層を均一に塗る。



全体を 横刷毛目 に仕上げる様な特殊な彩色をする場合などを除いては、
額から目の部分は横に塗り、鼻・頬は縦塗りで、最後の顎の部分は丸みに沿って塗ります。


初回の下塗り_10.26




      初回の
      下塗りの直後








 6).均(なら)研ぎ

    下塗りを数回行った後に、サンドペーパで
    塗りあとを均す。

ペーパー研ぎ_10.27

    180番のペーパ
    で研ぐ



 
                          ( ↑ クリックして見て下さい)

溜まりの除去_10.27


    目や歯の部分の
    胡粉の溜まり
    取り除く
    


拭きとり_10.27


    湿った布で
    軽く拭き上げる





  5)の下塗り と 6)の研ぎ の工程を1セットとして、
  3~5セット繰り返して、下塗りが完了します。


下塗り完了

          【蝉丸】           【曲見





能面の彩色では、
古色の陰影効果を出すために 梨地 を付ける場合があります。


強い梨地を付ける場合は、下塗りの完成した時点で最後にスポンジや刷毛で 梨地 を施して置きますが、
女面・男面など繊細な面の場合は、上塗りの時点で 梨地 を施します。




次は、
能面製作の最後の工程の彩色です。







「面を打つ」_面裏処理 5

   「面(おもて)を打つ」_小作り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


夏の気候から、
秋に変り、能面の彩色 にはいい時期になりました。

彫りの完成した能面が、お化粧を待っています。


表の化粧前に、 “ 面裏の処理 が必要です。

面裏には演者の汗などから能面を守る為に耐久性を考慮して、漆を塗ります。

しかし、
本漆は “ かぶれ などの弊害があるので、化学漆を使うのが通例になっています。



面裏の処理に必要な道具や材料は、

 面裏処理の道具
  ・工芸漆、
   
透(色なし)・黒
  ・うすめ液   
  ・まこも粉
 
  ・漆用の顔料
   
本朱・緑・黄  
 
  ・漆用刷毛(大・小)
  ・摺り用ペーパー



工芸用の と漆用の  顔料 がベースになります。



 1).作者銘に色漆を流す

色漆の調合_10.09

     透の漆に
     顔料を混ぜる




号の漆入れ_10.09









     凹彫りの銘に色漆を流し込む


号の漆入れ(2)_10.09









     面裏の基本色に応じて、銘の色を変える



 2).朱の下塗り

父尉(朱塗り)_10.09













 3).基本色の上塗り

父尉(上塗り)_10.09




     黒褐色の漆を
     上塗り


     (顎部はまだ未処理)







 4).ふるび粉をかける

父尉(まこも粉)_10.09

     半乾きの木地     
     に、まこも粉を
     振りかける







     自然な落ち着きのある色艶と仕上がり感を表現する ため


 5).研ぎ出し

父尉(研ぎ出し)_10.09










     8割方乾いた状態で、拭き漆で使用するペーパーで
     研ぎ出しをする
 
    
     研ぎ出すことにより、凹部にまこも粉の色が残り、
     凸部は下塗りの朱がわずかに浮き出てくる
    


これで、面裏の処理が終了して面裏は完了です。




女面の場合もほぼ同様の手順で、漆処理をします。

女面の朱塗り_10.09












女面の場合は、
紐穴の部分が毛書きされるので、紐で摺れた趣を出す為に、面表に黒褐色の漆を下塗りして置きます。

紐穴の疵彩色

  女面の
  紐穴部分の傷彩色


女面の朱塗りA090142





 紐穴部の
 面表の処理




基本色は、黒の漆で上塗りをして まこも粉 を振ります。

女面(黒塗り)_10.10







女面(まこも粉)_10.10











 

この後、研ぎ出して完成させます。

女面_10.11


雅勒 の場合、
男面は鉄色の面裏仕上げで統一しています。

男面(鉄色の調合)_10.10

   緑の顔料を
   透の漆で調合





男面(鉄色の調合2)_10.10




 黒漆を混ぜ
 鉄色に仕上げる





男面_10.11



能面の面裏は、
唯一作者の個性が出せる過程ですが、

さすがに、4面の同時処理は忙しいです。 


基本は一面ずつ仕上げるのがいいですネ。



次は、表の下塗りの段階に入ります。








< 過去の関連記事 >

   ・ 面裏の趣(おもむき)    ’10 7/26   ☞ こちら




「面(おもて)を打つ」_小作り 4

   「面(おもて)を打つ」_中彫り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


彫りの最終工程は、目・鼻・口の  小作り です。


小作り道具_9.06







           使う道具類



中彫り を終えた面(おもて)の表面を、150番のサンドペーパーで研ぎます。

特に、
女面・男面は繊細な彩色を意識して、入念に研ぎだします。




 1).目の小作り
 
    面裏の眼(まなこ)に相当する位置を軽く
    透(す)くっておく

面裏(目)_8.28


    (まなこ)
     見当彫り ⇒

 


    目の輪郭に沿って、軽く切れ目を入れる

目を切る_8.28










 
      良く切れる 切り出し を使って切り込む



    眼(まなこ)の中央に、錐(キリ)を通す

眼のキリ穴_8.28












    眼(まなこ)と、二重瞼を作る

眼_8.30










 2).鼻の小作り

    鼻穴の中央に、やや内側に沿って錐(キリ)を通す

鼻のキリ穴_8.28



   







面裏(目・鼻)_8.30




       面裏の
       目と鼻






 3).口の小作り


    両方の口元に、錐(キリ)を通す

口元のキリ穴_8.28












     下唇 の隙間を口元まで、鋸で切る

口の切込み_8.28












     歯を作る
   
鼻と口_8.30














面裏(口)_8.30


       面裏の口







 4).面裏の仕上げ

面裏(掬い)_8.28












    面裏はノミ跡を残すように、
    軽くサンドペーパーをかける

面裏の完成_8.31
    














    “ 雅勒 の銘を彫り込んで、完成

面裏の号_ 8.31















彫りの完成_8.31



 

      【 十六中将







彫りの完成(2)_8.31





さて、
次からは 彩色 の工程に移りますが、10月頃になるでしょう。



それまでは、“ 離見(りけん)の見
(けん) ” です。

途中で、彫りの修正がでるかもしれません。 









 < 過去の関連記事 >
 
   ・ 「秘すれば花」 と云うけれど    ’12  8/7  ☞ こちら





「面(おもて)を打つ」_中彫り 4

   「面(おもて)を打つ」_荒取り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。


いよいよ、顔の表情を創り出す 中彫り の工程です。


荒取り は、叩きノミだけの作業でしたが、
これからは彫刻刀がメインの道具になります。


中彫り道具










 1).荒取り を終えた時点で、目・鼻・口の位置を
    確認します。

素描_8.17




 2).縦型紙の型番(額から顎まで)の順に各位置の
    型紙を当てながら彫り進める。
    
目上_8.20


    目上の型紙当て ⇒




鼻_8.20




 ⇐ 鼻頂点の
   型紙当て






  2~3か所を同時にこなし、額(ひたい)から顎(あご)までを
   平均的に彫り進めると、自然と滑らかな仕上げになっていく。




 目の中彫り
   

img052

 
 
   額からの俯瞰    正面からの俯瞰     目の全体


額からの俯瞰_ 8.24



       



目・鼻_8.24










img057









目・鼻a_8.24












 鼻・口の中彫り
img058






鼻・口_8.24












この段階で、型紙との精度は 8割 程度です。


以降は型紙に頼らず、モデルの画像のイメージに仕上げていきます。





そして、仕上がりは

中彫り完了a_8.25











中彫り完了_8.25














十六中将_堀安右衛門十六中将_梅若「能の華」











 
    参考型紙のモデル           今回のモデル




裏彫りは、1cm程の厚さに透(す)くって置く

裏彫り_8.25




   目・鼻・口の
   小作り の為
   見当を付けておく








次は、彫り の最後の工程
目・鼻・口の 小作り と面裏の仕上げになります。








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   ・ 「秘すれば花」 と云うけれど    ’12  8/7  ☞ こちら




「面(おもて)を打つ」_荒取り  3

   「面(おもて)を打つ」_木取り の続きです。
       ↑
    クイックすると、別窓で開きます。



木取り の次は、縦(側面)の形状を作る工程で
叩きノミを使って “ 荒取り(コナシ) をします。



 1).面表の各部位の横線毎に、鋸(ノコギリ)
    “ 限界位置 まで切り込みを入れる。

縦を切込む_8.12

   




縦型の切込み_8.13



⇐ 2mm程の
  余裕有り






 2).鋸の切り込み位置に従い、ノミで叩いて余分な
    部分を落とし直角部を削いで滑らかにする。

表面落とし型





縦型の落し_8.13













 3).面表・側面を台形状にを削ぎ落す。

側面落とし型_2


   斜線部を
   削ぎ落す 




縦型の落し_8.13












 4).額(ひたい)と顎(あご)の余分な部分を落とす。


額を落とす_8.13













 5).目・鼻部分のコナシ

目の叩き_8.13

    目の部分




鼻部の叩き_8.13




 鼻の部分




     面表のコナシが完了
荒彫り(叩き)_8.13












 6).面裏の上(額の側)と下(顎の側)の反りを作る。

額_8.13






額の反り_8.13










      面裏の反りが完了
反り_8.13












 7).面裏を軽くすくい取りをする。

裏彫り_8.13







     以降の作業時、持ち手が出来ればいい程度に ・ ・
裏彫り(三分)_8.13



 










 8).縦型紙に従い、縦型の詳細合わせをする。

縦型の精度_8.14


   コナシただけでは
   縦型と合っていない




     この精度まで合わせる
フィットする縦型_8.15



 









荒取りの段階ではこの様に多少顔のイメージが出来上がります。


荒彫り完成_8.15




次の工程の 中彫り では、もっと目・鼻・口がはっきりしますヨ。








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「面(おもて)を打つ」_木取り 3

これから製作する男面の 十六中将 を、彫りから彩色までの過程を随時紹介していきます。


雅勒 の持っている能面教室では、最初に習う面は
小面(こおもて) で、初心者の場合は月2回(3時間/回)
のペースで45時間で完成させるように指導しています。

勿論、
教室の時間外での作業がかなりのウエイトを占めますので、実際のトータル時間はもっと長くなるでしょうね。


製作工程は大きく分類すると
 木取り ⇒ 荒取り ⇒ 中彫り ⇒ 小作り&仕上げ
で彫りが完成します。

彩色は
 面裏処理 ⇒ 下塗り ⇒ 上塗り ⇒ 彩色 ⇒ 毛書き
で一面完成です。

尉系の【 小牛尉(こうしじょう) や鬼神系の【 獅子口(ししぐち)】,怨霊系の【 般若(はんにゃ)】 などは
さらに、髪・髭などの植毛や眼・歯列の金冠などの細工作業が加わりますのでもっと時間と技術が必要になります。




(おもて)の製作にあたり、
参考にするモデルをきめます。

同じ面でも、作者によっては表情や彩色はさまざまです。

池田家伝来「能面」
 池田家伝来
 『能面』(写真集)



P8090518




 大野出目家
 第6代 甫閑(ほかん)
          【十六







堀安衛門「能面打ち-上」
  堀安右衛門
  『能面打ち_上』 


十六中将_堀安右衛門







⇐ 伝 龍右衛門 写し
   堀安右衛門 作
     【十六中将





梅若六郎家「能の華」
 梅若六郎家
 『能の華』(図録)

十六中将_梅若「能の華」







 十六中将】本面





このように参考とする面の画像を見比べて、モデルとなる面を決定します。

最終的に、
堀安右衛門著の『能面打ち_上』に掲載されている型紙を参考にさせてもらい、
型紙








梅若六郎家 能の華 の【十六中将】本面をモデルにして打つことにしました。



それでは、
まず最初の工程の 木取り です。

 1).面裏となる檜の面材で、面裏となる方を鉋(かんな)
     を掛けます。
   
           能面材には柾目(まさめ)と板目(いため)がありますが、
      大体は柾目の材を使用します。

            面表                  面表
           ↓                 ↓
板目
柾目

            柾目                  板目


     一般に、木裏(樹心に近い方)を「面の表」としているが、
     古面にはその反対に、「木裏」を「面裏」としているもの
      もある。


 2).面材の縦方向の中心線を引き、
     平面と縦型の型紙で材の両面に製図します。

平面の製図












     【十六中将】の基本サイズ
      縦        ・・・・  6寸9分   (208mm) 
      横        ・・・・  4寸6分 (138mm)
      厚(鼻の頂点)  ・・・・  2寸2分 ( 67mm) 



     能面の大きさは「女面」を基準とし、
      【小面】が標準になっている。

      縦        ・・・・  7寸   (212mm)
      横        ・・・・  4寸5分  (136mm)
      厚(鼻の頂点) ・・・・  2寸3分 ( 70mm)

      「タテ7寸」は当時の日本人の平均身長(5尺5寸)から
      きているとも云われている。




 3).鋸(のこぎり)を使って、余分な部分を落とします。

木取り













 3).叩きノミや突きノミで、面裏と面表が垂直になる
     ように側面を均(なら)します。

側面の製図











     この過程が重要で、
      ここは、型紙通りに平面を決める。

      出来上がりの面の輪郭の美しさを求めて・・・




 4).次の工程で、縦型に合わせて打ちだす為
     側面の製図をします。

各部位の厚み









側面の製図_a













このような手順で、平面の 木取り の半分が完了します。


今回は、ここまで 
次はお盆明けになるでしょうかネ 




明日は、
片道200Kmの運転で墓掃除に行ってきます。 






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