庵の庭の 吾亦紅 が終わり、

キク科の " 藤袴(ふじばかま) " が

茎の先端に小さな花を広げ始めました。

藤袴














日本には奈良時代に中国から渡来し野生化した

と言われている秋の七草のひとつです。


平安時代には、

吾亦紅 とともに香り花として親しまれたようです。



源氏物語 第三十帖 の巻名にもなっている

" 藤袴 " です。


藤袴(1)



光源氏の長男の夕霧が玉鬘(たまかずら)に、

この花を贈って求愛する場面に登場します。


  御簾のつまよりさし入れて、 
   「 これも御覧ずべきゆゑはありけり」とて、
  とみにも許さで持たまへれば、
  うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、
  引き動かしたり。

源氏物語絵巻











    同じ野の露にやつるる藤袴
        あはれはかけよかことばかりも

    
あなたと同じ野原で露に濡れて萎れている藤袴です。
     せめて、かわいそうだといって同情の言葉をかけて
     やってください。



  「 道の果てなる」とかや、
  いと心づきなくうたてなりぬれど、
  見知らぬさまに、やをら引き入りて、

  ・ ・ ・

            源氏物語 第三十帖 藤袴 第四段




この時代の " 藤袴 " は 「 蘭の花 」 と呼ばれ、

現代の「 蘭 」 に似た芳香を放つ植物とされていた

ようです。

藤袴(2)




生のままでは香りがないのですが、

葉や茎を乾かすとクマリンという芳香成分を放ちます。


中国では

蘭草・香水蘭とも呼ばれ浴槽の湯に浮かべてたり、

香り袋にして身に付けたといいます。




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