「面(おもて)を打つ」_彩色準備 の続きです。
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    クイックすると、別窓で開きます。



これから彩色する能面は、

女面1面と男面2面、そして翁系の計4面ですが、
しばらく彩色をしていなかったので、色感を取り戻す為に比較的簡単な彩色の 【 父尉(ちちのじょう) 】 から一面ずつ仕上げていきます。



 1).上塗り用の 胡粉 顔料 で色胡粉を作る。

    上塗り用具_11.09材料と道具

     ・上塗り胡粉
     ・乳鉢と乳棒
     ・水干顔料
     ・計量匙
     ・膠(にかわ)
     ・薬包紙




   上塗り用の胡粉は小さな薄い板状に固まっている
   ので、乳鉢を使ってなるべく細かい粒子になるよう
   “ 空摺り(からずり) する。

上塗り胡粉_11.09









胡粉の空ズリ_11.09












   水干顔料(すいかんがんりょう) の調合

顔料の調合_11.09

       ・淡口黄土 
       ・岱赭
       ・鶯茶緑




顔料の混合_11.09










    胡粉に調合した顔料を入れて、更に 空摺り する

上塗り胡粉の調合_11.09


     
       小匙2杯
          程度




色胡粉_11.09

        
       全体が薄く
       色付くまで
       空摺り する





    色胡粉を膠(にかわ)液で溶いて、“ 通し   に掛ける

色胡粉を溶く_11.09







 
通しで濾す_11.09
 
      下塗りよりも 
      細かい(#150)
      通し で濾す





    ぬるま湯で、濃度を薄目に調整

薄目に調整_11.09










 2).平筆で上塗りをする




    塗り終えた直後は、色がかなり濃くみえますが、
    乾いた時点の色が本来の色です


初回の上塗り_11.09


    良く乾かしてから塗りムラの無いように、
    上塗りは2~3回する。

                 (今回は、2回塗り)




 3).サンドペーパーで研ぎ出し


ペーパーで砥ぐ_11.10

      目の細かい
      ペーパー(#400)
   
      で軽くなぜる
      程度に ・ ・ ・






        研ぎ上りの状態

研ぎ上がり_11.10







 4).網ボカシで古色付けをする


    ヤシャブシ液にケーキカラーで古色を調整

古色の調合_11.10


      多少、
      赤味を足す







 
   面の縁と 額(ひたい)や鼻・頬のコブ等凸部を
    重点的に古色をかける




    網ぼかし により、梨地の凹部に古色が掛る





 5).タンポ打ち で、さらに濃い目の古色を付ける
    
タンポの絞り_11.10

      木綿の布に
      古色液を浸み
      込ませて、
   
      よく絞る



古色付け_11.10

      梨地の凸部に
      古色を打つ





古色の研ぎ_11.10
 
      9割方乾いたら
      布で研ぎ上げる





    ここまでで、
    上塗り色・薄めの古色・濃い目の古色の三段階
    の色調で彩色されました。





 6).最後にコーティングを兼ねた、仕上げ塗りをする

    上塗りで使った色胡粉液を、布で濾(こ)してから
    更に濃度を薄く調整する
   
上澄み液_11.10

      布濾し





上澄み液で塗る_11.10







    よく乾かしてから、再び布で強めに研ぎ上げて、
    塗りの段階は終了です。
 

    こんな状態に仕上がります

皺コブ





 7).冠(かんむり) の墨入れ


墨掏り_11.10

      中国墨と青墨
      をブレンドして
      摺る




         一般的な日本の墨は膠(にかわ)の成分が強く、
         艶(ツヤ)が出過ぎる為、能面の毛書きなどには、
         膠成分の少ない中国墨を使う


冠部の彩色_11.10


      冠部分




 
くり目の墨入れ_11.10
      くり抜き目の
      中に墨入れ








 8).唇の紅差し

朱墨を膠でする_11.10
 
      濃い朱墨を
      膠で摺って

      墨を混ぜて
      調整する



紅差し_11.10











 9).最後に冠下の毛書きと髭を書き入れ、
    眉と顎髭を付けて、切り顎を繋繋ぐ。

ボウボウ眉


      ボウボウ眉




顎つなぎ



      切り顎の
         繫ぎ





 10).全体の様子を見て、傷彩色 を施す。

冠部の傷彩色_11.10


      ボールペーパ
      で傷を付ける 



 
冠部の傷彩色(2)_11.10


      ヤシャブシ液を
      塗り古色付け      




   わずかな傷で、趣が変ります

冠部



これで、翁系の 【 父尉 】 が完成です。

父尉_完成


父尉_完成(2)父尉_面裏
















このシリーズも、
彫り から 彩色 まで能面製作の一通りの工程を紹介しましたが、

翁系は、ある意味特殊な面で彩色・工作も特殊です。



NHKの大河ドラマの 『 平清盛 』 も終盤に差し掛かったことですし・・・

平家ゆかりの男面、 十六中将(じゅうろくちゅうじょう) 】 の彩色をもって (おもて)を打つ 」シリーズの完結としたいと思います。