「面(おもて)を打つ」_彩色準備 の続きです。
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クイックすると、別窓で開きます。
これから彩色する能面は、
女面1面と男面2面、そして翁系の計4面ですが、
しばらく彩色をしていなかったので、色感を取り戻す為に比較的簡単な彩色の 【 父尉(ちちのじょう) 】 から一面ずつ仕上げていきます。
1).上塗り用の 胡粉 と 顔料 で色胡粉を作る。
材料と道具
・上塗り胡粉
・乳鉢と乳棒
・水干顔料
・計量匙
・膠(にかわ)液
・薬包紙
上塗り用の胡粉は小さな薄い板状に固まっている
ので、乳鉢を使ってなるべく細かい粒子になるよう
“ 空摺り(からずり) ” する。
水干顔料(すいかんがんりょう) の調合
・淡口黄土
・岱赭
・鶯茶緑
胡粉に調合した顔料を入れて、更に 空摺り する
小匙2杯
程度
全体が薄く
色付くまで
空摺り する
色胡粉を膠(にかわ)液で溶いて、“ 通し ” に掛ける
下塗りよりも
細かい(#150)
通し で濾す
ぬるま湯で、濃度を薄目に調整
2).平筆で上塗りをする
塗り終えた直後は、色がかなり濃くみえますが、
乾いた時点の色が本来の色です
良く乾かしてから塗りムラの無いように、
上塗りは2~3回する。
(今回は、2回塗り)
3).サンドペーパーで研ぎ出し
目の細かい
ペーパー(#400)
で軽くなぜる
程度に ・ ・ ・
研ぎ上りの状態
4).網ボカシで古色付けをする
ヤシャブシ液にケーキカラーで古色を調整
多少、
赤味を足す
面の縁と 額(ひたい)や鼻・頬のコブ等凸部を
重点的に古色をかける
網ぼかし により、梨地の凹部に古色が掛る
5).タンポ打ち で、さらに濃い目の古色を付ける
木綿の布に
古色液を浸み
込ませて、
よく絞る
梨地の凸部に
古色を打つ
9割方乾いたら
布で研ぎ上げる
ここまでで、
上塗り色・薄めの古色・濃い目の古色の三段階
の色調で彩色されました。
6).最後にコーティングを兼ねた、仕上げ塗りをする
上塗りで使った色胡粉液を、布で濾(こ)してから
更に濃度を薄く調整する
布濾し
よく乾かしてから、再び布で強めに研ぎ上げて、
塗りの段階は終了です。
こんな状態に仕上がります
7).冠(かんむり)部 と 眼 の墨入れ
中国墨と青墨
をブレンドして
摺る
一般的な日本の墨は膠(にかわ)の成分が強く、
艶(ツヤ)が出過ぎる為、能面の毛書きなどには、
膠成分の少ない中国墨を使う
冠部分
くり抜き目の
中に墨入れ
8).唇の紅差し
濃い朱墨を
膠で摺って
墨を混ぜて
調整する
9).最後に冠下の毛書きと髭を書き入れ、
眉と顎髭を付けて、切り顎を繋繋ぐ。
ボウボウ眉
切り顎の
繫ぎ
10).全体の様子を見て、傷彩色 を施す。
ボールペーパ
で傷を付ける
ヤシャブシ液を
塗り古色付け
わずかな傷で、趣が変ります
これで、翁系の 【 父尉 】 が完成です。
このシリーズも、
彫り から 彩色 まで能面製作の一通りの工程を紹介しましたが、
翁系は、ある意味特殊な面で彩色・工作も特殊です。
NHKの大河ドラマの 『 平清盛 』 も終盤に差し掛かったことですし・・・
平家ゆかりの男面、 【 十六中将(じゅうろくちゅうじょう) 】 の彩色をもって 「 面(おもて)を打つ 」シリーズの完結としたいと思います。
とりあえず 自分を褒めてあげましょう。
趣味だけではなく実益だけではない目指した仕事をやり遂げる思いは 技を持つ身の奥深い譲れないところがあります。
意地を噛むと言いますが体も張ります。
そんな仕事が出来ることを私は誇りに思います。
死ぬまで勉強でしょうし死んでもやらなきゃいけない思いは私にもありますので1つの作品を精魂詰めた雅勒さんに拍手と礼をいたします m(_ _)m
心のこもった翁系の 父尉 を拝見出来てありがたいです。