今、
能面の彫りを終えた面が三面と、彫り途中の面が一面あります。


ブログにアップした画像や朝夕の薄灯りの下で、彫りの終えた面と対面すると
彫り上がりの直後は、気付かないところが見えてくるのです。

こうして、
彩色に取り掛かるまで時を置くのは、この過程も大事だからです。


世阿弥の言葉に、
離見(りけん)の見(けん) と云う伝承があります。

花伝書








つまり、
 「 あらゆる観客の目の位置に心の目を置いて
            自分の完璧な舞姿を完成せよ


と云う教えです。



オリンピックの体操・男子総合で金メダルに輝いた
内村航平選手は、
  「 演技をしている自分をもう一人の自分が
   俯瞰しているという感覚がある
そうです。

これこそ、
まさに“ 離見の見 ” の極みではないでしょうか 




雅勒 の場合、
自分の作った能面を客観的に見直すのとは、多少意味合いが異なりますが、

自分の作品として観るのではなく、教えている生徒さんの作品としてみれば、自(おのず)と修正を必要とする個所が見えてきます。

この考え方も “ 離見の見 ” ではないかと思って、実践しています。



先月、
彫り終えた 曲見(しゃくみ ) のブログ画像をジュックリ見ると

曲見(彫り上がり)_8.07














下唇から顎(あご)にかけて、写し損なっている個所
彫りの甘さ が見えてきました。


曲見_旧金剛家伝来

    本面の
   口~顎廻り ⇒


修正箇所












下唇の湾曲と顎にかけての曲線 と 顎の張り具合が問題の個所です。

特に、顎の張り具合は
女面ですので、もう少し丸味が必要ですネ。 

これでは、男の顎になっています。


下唇と顎の修正



 彫りの
 修正 






曲見(修正)_9.21




















これで、納得がいきました。 


後は、
彩色した結果の様子次第です。






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