『 いづれ 菖蒲(あやめ) 杜若(かきつばた)

「 あやめ 」 と 「 かきつばた 」 、いづれも

同じアヤメ科の花で、区別しにくいですネ~ 


雅勒の庵の庭に、今咲く花はいづれかな 

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キショウブ










花菖蒲(はなしょうぶ) 」 と 「 黄菖蒲(きしょうぶ)
」 ですヨ~ 




さて今回は、能楽三番目(鬘物)の演目で、

この時期にぴったりの能楽 《 杜若
》 の花物語です。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


諸国を巡る僧が、三河国 [現在の愛知県の東部] に着き

沢辺に咲く 杜若(かきつばた) を眺めていると、

ひとりの里女が現れて、

「 ここは 杜若 の名所で八橋(やつはし)という処」  と

教えます。



僧が

「 八橋は、古歌に詠まれたと聞くが ・ ・ ・ 」 と水を

向けると

女は、

在原業平(ありわらのなりひら)が  『 かきつばた 』 の

五文字を句の上に置き

    らころも(唐衣)
     (着)つつ馴れにし
      ま(妻)しあれば
       るばる(遥々)きぬる
        び(旅)をしぞ思ふ

 と、旅の心を詠んだ故事を語ります。



やがて日も暮れてきたので、

一夜の宿を貸そう、と僧を自分の庵に案内します。


女はそこで装いを替え、

美しく輝く唐衣を着て、透額(すきびたい)の冠を戴いた

雅びな姿で現れます。

能「杜若」


     透額の冠
透額の冠








 
 「能百十番」より


唐衣は先ほどの和歌に詠まれた二条の后、

高子(たかこ:清和天皇の后)のもの、

冠は歌を詠んだ業平のもの、と告げ、

自分は 杜若 の精 であると明かします。

小面
杜若の精の面(おもて)
  おもに若い女面が掛け
  られます  【 小面
 











さらに、

歌舞(かぶ)の菩薩(ぼさつ)の化現(けげん)である業平が

詠む和歌によって、草木までも仏法の恵みを受ける

のだと語ります。

杜若 の精 は、

業平の恋や歌を引きながら、昔を偲びながら幻想的で

艶やかな舞い(序之舞)を舞います。


夜が白々と明けてきたころ、

悟りの境地を得たとして、 杜若 の精は姿を消すので

した。

                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ところで、

「あやめ」,「はなしょうぶ」,「かきつばた」 の見分け方、

ご存じですか 

菖蒲(あやめ)
アヤメ-a
 花弁の弁元に
 網目状の模様がある
 
 開花は、
 5月上旬~下旬


 
  (画像はWebより)


花菖蒲(はなしょうぶ)  
花菖蒲-b
 花弁の弁元に
 黄色い目型模様がある

 開花は、
 5月下旬~6月






杜若(かきつばた) 」 
811706-1920[1]

 花弁の弁元に
 白い目型模様があり、
 開花は、5月中旬~下旬           

水辺に咲く花なので
  さすがに庵にはありません )
   (画像はWebより)





花菖蒲の優雅な姿は、梅雨時のうっとうしさを

忘れさせてくれます。

でも、この梅雨いつまで続くのでしょうかネ~ 





 < シリーズ : 能と面の花物語 >
         

     ・ 第3回  能楽「石橋」 と 牡丹  ’11   5/ 6     こちら 
     ・ 第2回  能楽「桜川」 と 桜  
 ’11   4/ 1      こちら
   ・ 第1回  能楽「東北」 と 梅     ’11   3/11    こちら