能とあらゆる点で対照的である狂言は、
主に能と能の合間に上演される「本狂言」と、能の中に登場して人物を紹介したり、舞台の展開を説明したり、時には、面白おかしくストーリーを盛り立てる役(アイ)もこなす「間狂言(あいきょうげん)」があり、能の演出をより際立たせます。
2月は “ 節分 ” の月なので、【節分】という狂言に付いて解説しましょう。
季節の変わり目は、とかく体調を崩しやすいですネ~。
昔の人々は、
この時期、疫病神(やくびょうがみ)=『鬼』がやって来て悪い病気をはやらせると考え、節分に鬼を追う風習をあみ出したようです。
-鬼と煎り豆の民話-
むかし、ある年のこと、
日照り続きで稲が枯れ始めてきた。
困りはてた百姓が「誰でもよいから、雨を降らせてくれたら、
一人娘のおふくを嫁にやるがなぁ」とつぶやいた。
すると鬼があらわれ、「お前が今言ったことは本当か」という。
「田んぼが豊作になるように雨を降らせてくれたらな ・ ・ ・」
と約束する。
鬼は実際に雨を降らせ、村は豊作になってしまいました。
すると、鬼があらわれ「約束どおり、おふくを嫁にくれ」と云う。
おふくは、鬼のおかげで村が救われたと鬼の嫁になる。
おふくが嫁に行く日、母親は菜の花のタネをおふくに持たせ、
鬼のところへ行く道すがら、タネをまくように言いつける。
おふくは山深い鬼のところへ嫁いでいった。
嫁いだものの、鬼は酒ばかり飲んで、
おふくは辛くてたまりません。
春になり雪がとけた頃、おふくが外へ出ると、
菜の花が列をなして美しく咲いている。
おふくは母親が恋しくなり、菜の花の列をたよりに逃げ帰る。
「おふくはどこだぁ」とおふくを追ってきた鬼に、
母親は煎った豆を戸のすき間から投げ、この豆を植え、
花を咲かせて持ってくれば、おふくをお前にやろうという。
鬼は豆を育てようとするが、煎った豆は芽が出ない。
翌年も、その翌年も、母親のところへ来て、煎り豆をもらい、
育てようとするが芽が出ない。
そのうち、鬼はこなくなった。
谷真介著の「鬼といりまめ」絵本より
これが節分の豆まきの始まりだそうですヨ (^‐^)v
さて、本題の狂言の【節分】は、
節分の夜、夫が出雲大社へ年越しのお参りに出かけ、女房が一人で留守を守っている。
女房は、節分には蓬莱(ほうらい)の島に住む鬼がやってくるというので、柊(ひいらぎ)をさして戸締りをする。
⇐ 柊(ひいらぎ)
柊の花 ⇒
この時期咲いてますヨ~
そこへ蓬莱の島からやってきた鬼。
⇐ 【節分】で鬼が掛ける
《 武悪 》 の面
鬼の恐ろしさよりも滑稽さを
強調した面で、
目尻の垂れ下がり ・鼻・瘤
がデフォルメされている。
遠いところからやってきたので、腹が減ったといって人家を探すと家があるので覗き見てみると柊が目に刺さってしまう。
怒って柊を叩き落して覗きみると、中にひとりで女がいる。
女の家の戸を叩くが、女は夫が留守だからと言って開けてはくれない。
観念した女が戸を開けると外には人の姿が見えない。
鬼は蓬莱の島から持ってきた姿の見えなくなる箕(みの)を着ていたのである。
箕を脱いで、再び女に戸を開けさせる。
戸を開けるとそこに鬼がいるので、女は大層驚いて帰ってくれというが、鬼は腹がへったので何か食べさせてくれたら帰るという。
女が麦を出すと食べられないといって押しやってしまう。
女は怒るが、美しい人妻に一目惚れした鬼は一向に気に止めず、恋の小歌を歌いながら女を口説き始める。
女は「本当に自分に惚れているのなら、宝物を差し出せ」と云う。
鬼は蓬莱の島から持ってきた隠れ笠,隠れ蓑,打出の小槌を差し出して、家の中にいれてもらう。
鬼は大よろこびで亭主気取りでごきげん。
↑ (財)地域創造のHPより
お借りしました
女は頃はよしと、煎り豆をとり出し「福は内、鬼は外」と鬼に投げつけて鬼を追いだしてしまう。
鬼は、あわてふためき逃げ去っていくのでした。
能・狂言面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室」
(http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html)
を覗いてみて下さい。
< シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
第6回 能楽「道成寺」と面 ’11 1/21
第5回 能楽「蝉丸」と面 ’11 1/ 4
第4回 能楽「羽衣」と面 ’10 12/ 1
第3回 能楽「清経」と面 ’10 11/ 1
第2回 能楽「高砂」と面 ’10 9/30
第1回 能楽「翁」と面 ’10 8/18
お面もぜんぜん怖くないし(爆)
でも節分の豆まきの起源は要メモですね。