「鬘能」のなかでも、【羽衣(はごろも)】は昔話でもお馴染みの『天女(あま)の羽衣』伝説を能にしたものです。
昔話では、天女は羽衣を隠されてしまい、泣く泣く人間の妻になるのですが ・ ・ ・
のどかな春のある朝、
三保(みお)の松原の漁師、白竜(はくりょう)が漁から帰ってきます。
すると、辺り一面に花振るなか妙なる音楽が聞こえよい香が漂っています。 近くの松の枝には美しい衣が掛っていたので家に持って帰り家宝にしようと考えます。
そこに天女が現れ、その衣は“ 天女の羽衣 ” といってたやすく人間に与えるものではないので返して欲しいと頼みます。
白竜は、“ 天女の羽衣 ”と聞いて、なおさら返すことはできないとつっぱねます。
天女は「それがないと、天に帰れない」と嘆き悲しみます。
「羽衣を返したら、舞を舞わずに帰ってしまうだろう」と言う白竜に、
天女は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と返します。
正直者の白竜は、そんな天女の言葉に心を動かされ、「羽衣を返す代償に天人の舞楽を見せてくれ」と言い羽衣を返すのです。
白竜から羽衣を
返してもらう天女 ⇒
天女は喜んで承諾し、返してもらった羽衣をまとい、
月宮殿の様子を表す舞や、三保の松原の春の景色をたたえる舞いを舞いながら空高く昇り、やがて富士の彼方、霞にまぎれて消えていきます。
【羽衣】や【松風】等の鬘物の演目で掛けられる、若い女性の面は流派によって異なります。
⇐ 観世流で使用される
《若女》
宝生流で使用される
《節木増》 ⇒
⇐ 金春や喜多流で
使用される 《小面》
金剛流で使用される
《孫次郎》 ⇒
能面の詳細説明はHP『雅勒の庵』の「作品展示室」
(http://www.net1.jway.ne.jp/k_garoku/gallery.html)
を覗いてみて下さい。
< シリーズ : 面(おもて)から観る能楽 >
第3回 能楽「清経」と面 ’10 11/ 1
第2回 能楽「高砂」と面 ’10 9/30
第1回 能楽「翁」と面 ’10 8/18